研究課題
1)バクテリオロドプシンのプロトン輸送サイクルは、通常、K、L、M、N、およびOの5つの反応中間体で記述される。反応サイクルの前半部分で起こるタンパク質の構造変化については詳細な情報が蓄積されてきているが、反応サイクルの後半部分については構造情報が不足しており、N→O転移で起こるとされている13-cis、15-anti型から13-trans、15-anti型へのレチナールの異性化の機構が未解明のままである。我々はO中間体の構造情報を得ることを目指しており、それに先立ち、O中間体の振舞いを正しく理解する作業に取り組んだ。具体的には、バクテリオロドプシンおよび類似の光駆動プロトンポンプであるアーキロドプシンの光反応サイクルに及ぼすpH及びイオン強度の影響を詳細に調べた。その結果、これらのプロトン輸送タンパク質のO中間体には吸収スペクトルが少し異なる2つのsubstate(O1、O2)があることが示され、また、細胞質側からのプロトンの取り込み過程(N→O1転移)がレチナールの異性化(O1→O2転移)に先立って起こることが示唆された。2)Natronomonas pharaonis JCM8858株を使ったUV変異導入実験を、UV照射線量を0~150 J/m2で3段階程度に変更して、40回程度行った。未照射条件、15, 55, 100 J/m^2の照射条件でそれぞれ100株程度をサンプリングして、ゲノム DNAを取り、ライブラリーを作成して、シーケンスを行った。興味深いことに、UV照射で得られたおよそ1万コロニーの中で、たった一つだけ完全にカロテノイド合成能を失った白い株が得られた。この株は、走性を持っているので、ロドプシン類の機能発現実験に使用できると考えている。
3: やや遅れている
光駆動プロトンポンプ(バクテリオロドプシンおよびアーキロドプシン)の反応サイクルの最終段階で生じるO中間体(構造未決定)のX線結晶構造解析を目指しているが、この反応中間体を効率的にトラップするための最適条件を見つける作業(反応キネティックスの解析)に手間取っている。
1)バクテリオロドプシンおよびアーキロドプシンの光反応サイクルの解析を継続して行う。2)バクテリオロドプシンおよびアーキロドプシンの結晶化を行い、目的とする反応中間体の構造決定に適した結晶を作製する。3)バクテリオロドプシンまたはアーキロドプシンのO中間体の構造決定を目指す。
コロナ禍にあり、学会発表がOn-Lineで行われたため、予定していた旅費を使用する機会がなかった。
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