研究課題/領域番号 |
19K06585
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
川鍋 陽 香川大学, 医学部, 講師 (10707128)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | パッチクランプ / 電気生理学 / 膜電位センサー / 電位依存性タンパク質 / 電位依存性ホスファターゼ / 非天然蛍光アミノ酸 |
研究実績の概要 |
本研究では、イノシトールリン脂質脱リン酸化酵素(PIPase)の酵素活性制御モデルの検証および構造変化解析を行う。具体的には電位依存性ホスファターゼVSPもしくはPTENに導入した非天然蛍光アミノ酸Anapの蛍光・FRET変化を検出することにより活性化状態へと至る構造変化の実体とPIPaseに共通する動作原理を明らかにする。 前年度整備した蛍光・電流同時計測システム(パッチクランプ法による測定が可能な電気生理学装備(AxoPatch200B, Digidata1550B)と高感度scMOSカメラ(Zyla 4.2 PLUS)、高輝度LED)が整備されたため、電流-蛍光リアルタイム同時計測が可能となった。ただし、搭載している高輝度LEDの波長が可視光限定で紫外光に対応しておらず、非天然蛍光アミノ酸Anap(350~380nm付近で励起)の蛍光を計測することができなかった(紫外光の光源はあるが、光源自体を交換する必要があった)。そこで、本年度は新たに可視光~紫外光をカバーする波長範囲の広い光源を導入した(X-Cite mini+)。これにより、Anapと蛍光タンパク質(主に赤色蛍光タンパク質のmCherry)の併用することで、目的タンパク質にAnapが組み込まれており、かつ目的タンパク質が発現しているのかを検証できるようになった。これをふまえ、ホヤ由来VSPであるCi-VSPの細胞質側リンカー部H237にAnapを組み込み膜電位依存的蛍光変化の観測を試みたが、現状では蛍光変化を検出することができていない。次年度は条件検討をすることで蛍光変化の検出を目指し、その後にAnap導入場所のスクリーニングを行うことで、膜電位依存的な構造変化に関する情報を得る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度、測定システムに波長範囲が広い高輝度LED光源を新たに整備し、測定系の確立を実施した。これにより非天然蛍光アミノ酸からの膜電位依存的蛍光変化を検出する系の整備が完了し、実際に蛍光変化の検出を試みる段階となっている。しかし、現状その試みが達成できておらず、研究実施状況は遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に整備が完了した電流―蛍光同時リアルタイム計測システムを用いて、細胞内構造変化を非天然蛍光アミノ酸Anapを検出する条件検討を実施する。そののちに、細胞内ドメインに導入したAnap(導入部位のスクリーニングも実施)と、別ドメインに付加したEGFPでドメイン間および、細胞膜に局在させた蛍光ラベル脂質との間でのFRETを解析することで、距離変動を評価し、どのような構造変化が起きているのかを検討する。 上記はWhole-cell計測で実施する予定であるが、インサイドアウトパッチを使用した系での計測もできるように条件を最適化していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度をもって、蛍光―電流計測システムのセットアップは完了した。現在、当初目的であった膜電位依存的蛍光変化を捉えるための条件設定を行っている最中である。そのため、変異体作製のための遺伝子操作試薬・消耗品の消費が低水準であったため残額が発生した。次年度においては多くの変異体を作製しスクリーニングを実施する予定のため、その試薬購入のために残額を充当する予定である。
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