研究課題/領域番号 |
19K06588
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
杉山 成 高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 教授 (90615428)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 脂溶性ビタミンK / 凝固ゲル中結晶化 / タンパク質 / X線結晶構造解析 |
研究実績の概要 |
ステロイドX受容体(SXR)は骨粗鬆症治療薬の標的タンパク質である。脂溶性ビタミンK2と結合することで活性化され、骨形成に関与する遺伝子発現を誘導する転写因子である。これまでの研究から、各種脂溶性ビタミンKの側鎖部分において、SXRに対する結合活性の強さに明確な差があることが分かっている。本研究では、各種脂溶性ビタミンK-SXRの複合体構造とSXRに対する結合能および転写活性の強さをそれぞれ比較することによって、SXRの分子認識機構の構造基盤を明らかにすることを目的とする。 本年度は,大腸菌を用いたSXRの大量発現と精製を行い必要なサンプル調整を進めると同時に,ゲル中で育成したアポ型SXR結晶を用いて浸漬法により複合体結晶の取得を試みた。まず,SXRと同じ核内受容体であるプレグナンX受容体(PXR)のアゴニストである脂溶性化合物SR12813(コレステロール降下剤)をリガンドとして用いることにした。SR12813化合物を脂溶性化合物の溶解によく使用される50%DMSO含有水溶液に溶解させ,そこへ凝固ゲル中で育成させたアポ型SXR結晶を浸漬させた。この浸漬法を用いて複合体結晶を作製することを試みた。シンクロトロン放射光SPring-8にて受託測定によるX線回折実験をおこなったところ,構造解析可能な2.5A分解能の回折強度データを取得することに成功した。これらのデータを用いて構造解析を進めた結果,活性部位に結合したSR12813化合物の存在を確認した。複合体構造解析はアポ型SXR構造を初期モデルとして解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス禍により2020年3月以降,高知大学内での実験ができない状況となり4月以降も出張は原則禁止となった。また,シンクロトロン放射光施設SPring-8(兵庫県)においても4月以降の出張が困難となり,2020度のビームタイムは10月以降へ延期となった(https://user.spring8.or.jp/?p=21359)。本研究はX線回折実験を主体として計画されているため,主な実験は10月以降まで全く実施できない状況となった。さらに,結晶化実験は,高知大学の研究室にて行う計画となっているが,「3つの密」を避けるため研究室での滞在期間・滞在時間を極力減らす対策が必要となり,当初の計画通りの研究実施時間が十分に確保できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度以降は,SXRの転写活性に対する脂溶性化合物の構造特異性を調べるため,凝固ゲル中アポ型SXR結晶を浸漬させる方法を用いて,各種脂溶性ビタミンとSXRの複合体結晶を作製し構造解析を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス禍により2020年3月以降,高知大学内での実験ができない状況となり4月以降も出張は原則禁止となった。また,シンクロトロン放射光施設SPring-8(兵庫県)においても4月以降の来所が禁止となり,2020年度のビームタイムは10月以降へ延期となった(https://user.spring8.or.jp/?p=21359)。本研究はX線回折実験を主体として計画されているため,回折実験は10月以降まで全く実施できない状況となった。さらに,結晶化実験は,高知大学の研究室にて行う計画となっているが,「3つの密」を避けるため研究室での滞在期間・滞在時間を極力減らす対策が必要となり,当初の計画通りの実験時間が十分に確保できなかった。
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