研究課題/領域番号 |
19K06590
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
佐々木 章 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (30580162)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 画像相関分光法 |
研究実績の概要 |
本研究では、レーザー共走査型共焦点顕微鏡のタイムラプス測定画像(生データ)を取得し、分子拡散由来のシグナル(蛍光強度揺らぎ)とオルガネラ等の構造体のシグナルを分離し、画像相関法等を用いて、通常のイメージングにおける蛍光強度分布の情報に加えて、共局在度、構造体の移動方向、核酸分子の分解度、DNA認識タンパク質との相互作用、分子数、複合体形成のような高次情報を抽出し、さらにそれらの情報を統合することを目的としている。 また、細胞内に導入されたDNA分子の分解をターゲットとし分解に関与する因子の同定や機能解明を目指している。
我々は過去に細胞内におけるDNAの分解活性が異なる細胞株を見出している。今年度は分解活性が異なることが想定される3種類のヒト細胞株を用意し、RNAseqを用いてそれらの細胞の遺伝子発現プロファイルを比較した。その結果、想定したよりも多数の因子の発現が大きく異なっていたため、因子の絞り込みにはさらに精密なデータ解析を実施する。一方、変化が見られたタンパク質の中には核酸分解酵素も数種類含まれていることが明らかになり、一定の絞り込みは成功していることが示唆された。今後責任因子の候補を絞り込むためにインフォマティクスの解析を多角的に進める。また、前年度に引き続き、時空間相関イメージングの基礎となる画像相関法の基盤技術の検討を行った。細胞にDNAを物理的に導入する系、安定した画像相関イメージングのための温度管理や装置の安定性と計測データの妥当性を評価するための標準試料の作製にも着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
次世代シーケンサーを用いたトランスクリプトーム解析や、前年度から継続している測定システムと要素技術の構築に関しては着実に進展している。しかしながら、実際データを用いた高次イメージングデータ統合の実証には未だ至っておらず、全体としてはやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
高次イメージング情報の統合と原理証明を加速し、細胞内での解析に供せる段階に到達させるため、所属機関内での連携を引き続き強化する。さらに、トランスクリプトーム解析から想定される候補タンパク質について、より絞り込んだ上でCRISPR/Cas9等を活用した細胞機能解析を目指す。本研究で細胞内での計測を行うための超解像顕微鏡は非常に高精度に調整することが必要であり、今年度に数回、システムが不安定になり修理等を行なったことも遅れの一因となっている。測定ごとに機器の性能を確認し最適な状態を保つためのストラテジーの確立も取り組むべき課題である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はRNAseq以外にはプログラム設計と調査を中心に行ったため、試薬等の費用に一部残額が発生した。また、当該年度に導入する予定であった機器は、購入せずとも所属機関内で調達することができたため、その分の費用は次年度に先送ることとした。一方でシステムの安定性やデータの比較互換性を担保するためのストラテジー開発や標準試料の調達に当初想定していなかった費用が発生しており、次年度は消耗品を中心にを当初の計画に沿いつつ必要に応じて使用する予定である。
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