本研究では、レーザー共走査型共焦点顕微鏡のタイムラプス測定画像を取得し、分子拡散由来のシグナル(蛍光強度揺らぎ)とオルガネラ等の構造体の シグナルを分離した状態において、画像相関法等を用いて、通常のイメージングにおける蛍光強度分布の情報に加えて、分子サイズ、 分子間相互作用、分子数のような高次情報を抽出し、統合することを目的としている。 また、細胞内に導入されたDNA分子の分解に関与する因子の同定や機能解明を目指している。 まず、時空間相関イメージングの基盤技術の検討を行った。具体的には、画像相互相関法(Image cross-correlation spectroscopy) の原理により、画像の共局在性を定量解析する方法について検討した。試料として、任意の距離を隔てて2色で蛍光標識されたDNAオリガミ分子を設計し、 標識間の相関を定量化して2色間の共局在性を判別した。また、画像相関を実施する際に必須となる、顕微鏡の調整やキャリブレーションに使用する標準試料に関する情報をまとめた総説論文を発表した。本技術をDNAのみならず細胞内RNAに展開するための技術として、蛍光アプタマーを活用した蛍光相関解析の検討を行った。蛍光RNAアプタマーと蛍光基質の結合解離やそれによる蛍光強度の増大、蛍光相関測定への適用における基本的性質の検証などを行い、論文成果を得た。また、画像相関の基礎技術が顕微鏡のハードウェア性能などを定量評価することに適していることを見出し、招待講演並びに論文を発表した。さらに、DNA分解活性が異なることが想定される3種類のヒト細胞株を用意し、RNAseqを用いてそれらの細胞の遺伝子発現プロファイルを比較した。その結果、変化が見られたタンパク質の中に核酸分解酵素も数種類含まれていることが明らかになり、一定の絞り込みは成功していることが示唆された。
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