研究課題/領域番号 |
19K06593
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
須河 光弘 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (80626383)
|
研究分担者 |
矢島 潤一郎 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (00453499)
道上 達男 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (10282724)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | アクチン / FRET / 偏光 / 構造変化 / 細胞骨格 |
研究実績の概要 |
細胞内におけるタンパク質の構造変化を1分子レベルかつより高感度に捉える方法として偏光FRET法を着想し、研究を進めている。本研究課題では、主にアクチンをモデル分子として、細胞内でのアクチンの構造機能相関の解析を進めてきた。アクチンの構造生物学に関して、アクチンの構造多型性が明らかにされてきた。例えば、脱重合状態から重合状態での構造変化、重合端から内部へのトレッドミルでの構造変化、さらにアクチン結合タンパクとの複合体形成における構造変化などが解かれた。さらに、コフィリンやミオシンなど一部のアクチン結合タンパクは、アクチンフィラメントに協同的に結合することがin vitroでの実験により分かっていた。しかし、このようなアクチンの構造多型性や協同性が細胞内でも起きているのか、さらに細胞内現象にどのような効果があるのか、つまりアクチンの細胞内での構造機能相関はまだよく分かっていない。そこで、偏光FRET法により、細胞内でのアクチン分子の構造状態を解析することを目指している。これまでの研究で、偏光FRET用に蛍光修飾したアクチン(pFRET-アクチン)を試作し、pFRET-アクチンを培養細胞内に導入してライブセル蛍光イメージングを行うところまで成功した。しかし、in vitroでの1分子計測からアクチンに修飾した蛍光の偏光が安定していない可能性が示唆され、これを解決すべく蛍光修飾部位や蛍光色素の再検討を行った。しかし、これらの方策では改善できず、進捗状況が遅れている。タンパク質表面上での蛍光色素の運動性を推定するためにMDシミュレーションを活用することを計画している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
アクチン結合タンパクのチモシンのアクチン結合ドメインを融合させたpFRET-アクチンにおいて、in vitroでの1分子FRETイメージングを行い、FRET効率が2状態遷移すること、FRET効率の複数の分集合が存在することが分かった。また、bulkでのFRET計測において、チモシン・ドメインの切断前後でpFRET-アクチンのFRET効率が変化することも確認できた。よって、チモシンとアクチンとの結合解離に伴うFRET効率の変化が計測できていると考えられる。しかし、1分子計測においてFRET効率の分布が安定しないため、アクチンに修飾した蛍光色素の偏光が安定していない可能性も示唆された。そこで、アクチンの蛍光修飾部位と蛍光色素の再検討を行ってきたが大きな改善が見られなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
偏光FRET法は、偏光に依存したFRETを応用した方法であるため、タンパク表面での蛍光色素の配向と運動性に強く依存する。タンパクの表面は立体構造的にも電荷的にも不均一であるため、当初の想定通りに蛍光色素が配向しないことなども良くある。そこでタンパク質表面上での蛍光色素の状態を推定するためにMDシミュレーションを活用することを計画している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2月に予定していた海外出張が中止となり差額が生じた。研究期間を延長して試薬等の購入に活用する予定である。
|