研究課題/領域番号 |
19K06594
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
福田 善之 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特任助教 (60571099)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | クライオFIB/SEM / 初代培養神経細胞 / ボルタ位相差クライオ透過電子顕微鏡 |
研究実績の概要 |
クライオ電子顕微鏡技術の発展により、細胞内のタンパク質複合体を直接検出し、その機能状態を示す空間分解能で構造の解析が可能である、「その場」でのビジュアルプロテオミクスが開発された。これにより、26SプロテアソームとトリペプチジルペプチダーゼⅡに有意な空間的相関関係が有ることが示された。この結果は、タンパク質の空間的相関関係が細胞機能の制御機構に関与していることを示唆している。本研究課題では、タンパク質の空間的相関と細胞機能の制御機構の関連性を解明するために、成長円錐における局所タンパク質合成およびユビキチン―プロテアソーム系を介した局所タンパク質分解の制御機構を、関連分子の空間的相関性の観点から解明することを試みる
初年度は、クライオFIB-SEMによる切削条件の検討を急速凍結した酵母細胞を用いて行った。ボルタ位相差クライオ透過電子顕微鏡による切削した凍結試料の観察では、観察像がゆがみ、コントラストの改善が得られなかった。その理由として、切削した薄片の表面が帯電することで、照射した電子線が影響を受け、ボルタ位相板が位置する後焦点面において焦点が結ばれなかったからだと考えられる。
切削した試料の帯電問題を解決するために、プラチナを用いたスパッタリングを行い、薄片表面の導電性の改善を試みた。プラチナ粒子が必要以上の厚さであれば、電子線を遮蔽してしまい、不十分であれば、帯電問題が解決されないため、適切な厚さで表面をコーティングする必要があり、適切な条件検討に当初予測した以上の時間を要してしまった。今後は初代培養神経細胞でのクライオFIB-SEMで切削した試料だけでなく、切削せずとも観察ができる成長円錐の辺縁部などの観察を開始する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
クライオ電子線トモグラフィーを用いることで、生理的状態に近似した環境で保存された細胞を、数ナノメートルの空間分解能で三次元的に可視化することが可能である。しかしながら、透過電子顕微鏡で試料に照射する電子線の透過性により、クライオ電子線トモグラフィーで観察ができる試料は~500 nm程の厚さの構造に限られている。そのため、本研究課題では、急速凍結した初代培養神経細胞の成長円錐をクライオFIB-SEMを用いて切削した後、クライオ電子線トモグラフィーによる三次元構造の取得を計画していた。
今年度では、クライオFIB-SEMによる切削条件の検討を急速凍結した酵母細胞を用いて行った。そして、切削した凍結試料の薄片をボルタ位相差クライオ透過電子顕微鏡で観察したところ、観察像がゆがみ、位相差法によるコントラストの改善が得られなかった。その理由として、切削した薄片の表面が帯電することで、照射した電子線が影響を受け、ボルタ位相板が位置する後焦点面において焦点が結ばれなかったからだと考えられる。
この問題を解決するために、プラチナを用いたスパッタリングによる薄片表面の導電性の改善を試みた。プラチナ粒子が必要以上の厚さであれば、電子線を遮蔽してしまい、不十分であれば、帯電問題が解決されないため、適切な厚さで表面をコーティングする条件の検討に当初予測した以上に時間がかかってしまった。そのため、現在までの進捗状況の区分は当初の予定よりも遅れているとした。
|
今後の研究の推進方策 |
二年目は、現状確立しつつある試料作製条件を用いて初代培養神経細胞の薄片作成を行い、ボルタ位相差電子線トモグラフィーによる三次元構造の取得を予定している。また、クライオFIB-SEMを用いた切削を行わずとも観察が可能と思われる、成長円錐の辺縁部の三次元構造の取得を並行して行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、クライオFIB-SEMの条件検討に主に時間を割いた。そのため、海馬由来神経細胞の初代培養に用いる試薬の消費量が計画よりも少なかったために次年度使用額が生じた。 この次年度使用額は、今年度計画していたように、海馬由来神経細胞の初代培養に用いる試薬の購入に充てることを計画している。
|