本研究課題では、タンパク質の空間的相関と細胞機能の制御機構の関連性を解明するために、成長円錐における局所タンパク質合成およびユビキチン―プロテアソーム系を介した局所タンパク質分解の制御機構を、関連分子の空間的相関性の観点から解明することを試みる。 昨年度はクライオFIB-SEM装置の調整、急速凍結試料切削の条件検討そしてプラチナスパッタリングの条件検討を行い、クライオFIB-SEMを用いた凍結試料切削条件の確立に成功した。このクライオFIB-SEMによる切削法を用いて急速凍結した初代培養神経細胞の切削を行ったところ、神経細胞由来の突起の厚さにより、奥行の短い薄片しか作製できなかった。 今年度の初めに、東京大学医学部に設置されているクライオFIB-SEMの大規模アップデートが行われた。この大規模アップデートにより、凍結試料の一部を切り出し、切り出したブロックを冷却したプローブで専用の試料グリッドに移動させるリフトアウト法が実行可能となった。そのため、このリフトアウト法を用いることで、高密度に培養した神経細胞から試料ブロックを切り出し、十分な奥行きを持つ薄片を作製できると考えた。このリフトアウト法は国内だけでなく海外においても、新しい技術であったため、まずリフトアウト法の立ち上げを行った。高圧凍結したマウス精子をテスト試料としてリフトアウト法の立ち上げに成功した。しかしながら、手法の立ち上げに想定以上に時間がかかってしまい、神経細胞を試料としたリフトアウト法を行うことはできなかった。 また、昨年に引き続き、電子顕微鏡用試料グリッド上で培養した初代培養神経細胞の急速凍結を用いて、直接神経細胞由来の神経突起のクライオ電子線トモグラフィーを行った。傾斜系列像から立体再構成したトモグラムにおいて、球状の粒子が複数観察された。しかしながら研究期間内に、画像解析を終了することはできなかった。
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