代謝調節におけるインプリント遺伝子の役割と進化的意義について 哺乳類において父親由来のゲノムと母親由来のゲノムは機能的に等価でない。これはゲノムインプリンティング(ゲノム刷り込み)が存在し、インプリント遺伝子という父親由来アレル特異的あるいは母親由来アレル特異的な発現を示す遺伝子が存在することによる。インプリント遺伝子の進化的意義については胎児の大きさをめぐる父方、母方アレルの間に利益相反があるというHaigの綱引き説が有力である。それは父親としては胎児の体が大きく成長するほうが有利であり、母親としては胎児が大きく成長しすぎると母体が不利益を被るというものである。私たちはこの説を「肥満と痩せ」にまで発展させ、白色脂肪におけるインプリント遺伝子の発現と体重の関係において、父性発現と母性発現インプリント遺伝子の役割の明らかな差を見出した。本研究ではこの説をさらに検証するために、エネルギーを消費し、肥満に関連する褐色脂肪細胞およびベージュ脂肪細胞におけるインプリント遺伝子の発現解析を行い体重との相関を検証した。さらにインプリント遺伝子のひとつであるMeg3のコンディショナルノックアウトマウスを作製し、肥満または痩せに関与するかを調べた。このようにして褐色脂肪、およびベージュ脂肪細胞における代謝調節(熱産生)においてインプリント遺伝子がどのような役割をもつのかを明らかにし、ゲノムインプリンティングの生物学的・進化的意義について考察をすすめた。
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