研究課題/領域番号 |
19K06610
|
研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
竹林 慎一郎 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (50392022)
|
研究分担者 |
平谷 伊智朗 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, チームリーダー (40583753)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | DNA複製 / 染色体ドメイン / シングルセル |
研究実績の概要 |
本研究は,最近申請者が開発した染色体複製ドメイン構造を単一細胞で,かつゲノムワイドに調べることができるsingle-cell DNA replication sequencing(scRepli-seq)法を用いて,これまでアプローチが困難であった生体由来の個々の細胞における染色体構造制御を明らかにすることを目指している。これまで培養細胞を用いた解析においてscRepli-seq法の有効性を確認できていたが,実際の生体由来細胞の解析に応用するには技術的な改良が必要であった。そこで本年度は,蛍光標識したヌクレオチド類似体(Fluorescein-dUTP)を細胞に取り込ませる方法を検討し,DNA合成期の細胞を特異的に標識できることを見出した。さらに,初期発生胚操作用のマイクロマニピュレーターシステムを利用して,この蛍光標識した細胞を顕微鏡下で1つずつ単離し,回収することにも成功した。Fluorescein-dUTPの利用により単にDNA合成期の細胞の同定が可能になっただけでなく,細胞がDNA合成期のどの段階にいるのかをFluorescein-dUTPのパターンから推測できるという新たな発見があった。具体的には,DNA合成期の初期から中期の段階にいる細胞がFluorescein-dUTPを取り込んだ場合,Fluorescein-dUTPの蛍光シグナルが細胞核全体に分散して検出されるのに対し,DNA合成期の後期の段階にいる細胞では蛍光シグナルが核の膜周辺を縁取るようなパターンとして検出されることを見出した。すなわち,このパターンを指標に,scRepli-seq解析に最も適したDNA合成期の初期から中期の段階にいる細胞を単離し,回収できた。回収した細胞をscRepli-seq解析したところ,従来のFACSを利用した単一細胞単離法で得られた結果と同様の結果を得ることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
技術改良が概ね完了し,生体由来細胞を解析できる準備が整った。本研究では次世代シーケンサーを用いるが,サンプル調製(単一細胞からのゲノムDNAの増幅,増幅したDNAからライブラリー調製)の部分や,得られたデータの解析法などについても改良ができ,より安定な結果を得られるプロトコールを作成できた。
|
今後の研究の推進方策 |
改良した技術を用いて,実際の生体由来細胞を解析を進める。それにより,複製パターンが個々の細胞間でどれほど厳密に制御されているのかなど詳しく調べていく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
所属機関の変更にともない研究環境が変化したため,支出内容が変わった。異動先での実験条件の再調整に使用する。
|