DNA複製装置であるレプリソームは、複製ストレス非存在下では複製終了時にフォークから脱離するが、複製ストレス存在下では複製再開に備えてフォーク上で安定化されることが知られている。代表者は過去の研究において、安定化されたレプリソームが分裂期への進行により不安定化されてフォークから脱離するという現象を発見し、分裂期レプリソーム脱離機構と命名して、その分子機構の解析を行ってきた。 最終年度は、分裂期レプリソーム脱離におけるMre11ヌクレアーゼ活性(以下、Mre11活性)の関与について解析を行い、以下のことを明らかにした。1)Mre11活性は、複製ストレスによる停止フォーク存在下においてのみ分裂期への進行に必要となる。2)Mre11活性は分裂期への進行を決定する初期過程で働き、一旦分裂期へ進行した後は、分裂期に留まるためにMre11活性は必要ではない。3)Mre11活性を阻害すると、Wee1/Myt1キナーゼ活性依存的に分裂期CDK活性が急速に阻害されて、分裂期への進行が阻止される。4)Wee1/Myt1活性の阻害、あるいはWee1/Myt1による阻害に耐性のあるCDK変異体を発現することで、Mre11活性を阻害しても分裂期への進行とレプリソーム脱離が可能となる。 これらの結果は、分裂期初期において複製ストレスによる停止フォークが存在した場合、さらなる分裂期進行のためにはMre11活性によるフォークのプロセッシングが必要であるという可能性を示唆している。これらの研究成果について論文発表を行った。
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