研究実績の概要 |
ヒトでは約28,000種のノンコーディングRNA (ncRNA)が存在するが、ほとんどの機能は明らかになっていない。いくつかのものではncRNAがクロマチンに結合することで高次クロマチン構造が作り出される例が知られている。本研究ではRNAとクロマチンの相互作用を網羅的に検出する系を構築し、染色体高次構造に重要な役割をもつlncRNAを探索する。またその系の応用版として、RNAとクロマチンの相互作用を網羅的に検出する系を応用した新生鎖RNAの機能解析を行う。抗pol II抗体を用いエンハンサーRNAとプロモーターの相互作用の検出や、新生鎖RNAとクロマチンの相互作用を検出する系の開発を行う。本年度では予備研究で行なっていたRNAとクロマチンの相互作用を網羅的に検出する系(RADICL-seq)法のプロトコールの最適化を行なった。これまで使用していたマウスES細胞のみならず、マウス繊維芽細胞(iMEF), ショウジョウバエS2細胞、ヒト乳腺がん由来細胞(MCF7)を用いてRADICL-seqライブラリーを作製した。それぞれの細胞種におけるDNase Iによるゲノム断片化や使用細胞数の条件検討を行なった。RADICL-seq法で得られたRNAとクロマチンの相互作用が生理学的に正しいか評価するためにこれまでクロマチンとの相互作用が報告されているlncRNAであるroX1, roX2, Xist, MALAT1, NEAT1に注目しパブリックに入手できるChIRP-seq, CHART-seq, RAP法のいずれかのデータとの比較を行なったところ非常に高い相関性がみられた。また応用系の開発としてRADICL-seq法と特定の抗体による濃縮を組み合わせることによって、特定の領域を高感度で検出する系の開発に着手した。
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