研究実績の概要 |
ヒトでは約28,000種のノンコーディングRNA (ncRNA)が存在するが、ほとんどの機能は明らかになっていない。いくつかのncRNAはncRNAがクロマチンに結合することで高次クロマチン構造が作り出される例が知られている。本研究ではRNAとクロマチンの相互作用を網羅的に検出する系RADICL-seq法を構築し、染色体高次構造に重要な役割をもつncRNAを探索した。またその系の応用版として、RADICL-seq法を応用した新生鎖RNAの機能解析を行うことを目的とし、抗RNA pol II抗体を用いライブラリーを濃縮することでエンハンサーRNAとプロモーターの相互作用の検出や、新生鎖RNAとクロマチンの相互作用を検出する系の開発を行う。本年度は昨年度に引き続きRADICL-seq法と特定の抗体による濃縮を組み合わせることによって、特定の領域を高感度で検出する系(RADICL-IP法)の開発を進めた。新生鎖RNAとその相互作用するクロマチンを効率よく濃縮するために抗RNA pol II抗体を用い、マウスES細胞のRADICL-seqライブラリーの途中産物から抗体pull downを行ったところ、収量面で改善する必要性がみられた。よって1) low input用ライブラリー作製キットを用いるなどプロトコールを改変することで低収量でもライブラリー作製が可能となるか2) 細胞数を増やすことで収量をあげること3)抗ヒストン修飾抗体を用いることで収量をあげることを検討した。これらの検討結果によりいくつかの抗ヒストン修飾抗体ではライブラリー作製が可能となった。よって次世代シーケンサーHiseqを用いてデータを取得し解析を行った。その結果、抗H3K27me3抗体ではマウスES細胞においてH3K27me3修飾に相互作用するRNAの候補が多く同定できた。
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