研究課題
これまで利用してきたトランスポゼースTn5を使用して簡単にゲノムライブラリーを構築する方法には、DNAの種類によるバイアスとDNAとトランスポゼースのモル比を正確に決めて実験を行わないと、サンプル間でライブラリーサイズが大きくばらつくというデメリットがあった。大規模変異体を作成、ゲノム解析を行う前に、トランスポゼースとアダプターの複合体(シナプティック複合体)を磁気ビーズ上に固定して2次元表面上でDNAと反応させる方法で、バイアスの問題もタンパク/DNAの量比の問題も解決できることが報告されていたので、現在行っている溶液系のシステムを固相系システムに変えることを試みた。市販されている固定化トランスポゼースを使用して、独自の方法を工夫することで、迅速に再現性良くあらゆるDNA (ゲノムDNA, プラスミド、PCR断片等)に対して、100~1000kb程度の挿入を持ったライブラリーを作成する手法を確立した。いくつかのラン藻から抽出したゲノムDNAでライブラリーができないというトラブルもバッファー系を工夫することで改善できた。また、大量に変異体を作成後、培養ーDNA抽出のラインを効率化する必要があり、ディープウエルプレートを使用した振盪培養による培養と、プレート遠心機、ディープウエルプレートのママで使用できるマグネティットプレートの作成を行ない、プラスミド調製のような感覚で96サンプル単位でゲノムDNAを取り出すシステムを構築した。現在、UV変異とEMS変異によってランダム変異を導入した好塩菌(Natronomonas pharaonis)に対して、プレート単位で培養し、一部を冷蔵(-80℃)保存して、ゲノムライブラリーを作成し、ゲノムシーケンスを行っているところである。
2: おおむね順調に進展している
本来は、ライブラリー作成段階の効率化は行わずに、溶液系のタグメンテーション反応で進める予定であったが、ラン藻ゲノムDNAからのライブラリー作成効率が非常に悪かったことと、ライブラリーサイズを絞り込む作業を簡便化する方法を見直して、ゲノムライブラリーを大量に処理する方法が構築できた。この作業分だけ、Vibrio並びに好塩菌の変異体ライブラリー作成作業に遅れが生じたが、ライブラリー作成作業の効率化ほぼ予定通りに進んでいる。
当初の予定通り、真核生物と古細菌の変異体を大量に作成し、そのゲノム構造を決める作業を続けると同時に、保存した変異体を使った走性の変異体スクリーニングを行う。スクリーニング方法に工夫を加えることで様々な表現型(システム)に対応できる変異体リソースを目指し、リソースの保存方法にも注意を払うと同時にリソースのデータベース構築の方向も視野に入れる。変異体作成に関しては、変異体作成方法と実際にシーケンスで同定された変異の種類、数の相関、あるいは表現型と変異の入りやすさの相関などをまとめる。走性の効率的なスクリーニング系として、効率的スワームモニターシステムを作りハイスループット作業の効率化をすすめる。遺伝子ごとの特定は後回しにして、あくまでシステム全体の変異部位マップ作りを優先してすすめ、必要ならばトランスクリプトーム解析を併用する。MariaDB+PHPを利用したデータベースを構築する。
新型コロナの影響で、納品予定物品が遅れ、次年度に持ち越された。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (1件)
Biosci Biotechnol Biochem.
巻: 84 ページ: 330-337
10.1080/09168451.2019.1676695
J Biol Chem.
巻: 294 ページ: 12281-12292
10.1074/jbc.RA118.007340
Eur J Nutr.
巻: 58 ページ: 3291-3302
10.1007/s00394-018-1873-0
Sci Rep.
巻: 9 ページ: 3978
10.1038/s41598-019-40746-9