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2020 年度 実施状況報告書

強力な直接遺伝学を駆使して微生物走性システムの全貌を見る

研究課題

研究課題/領域番号 19K06627
研究機関名古屋大学

研究代表者

井原 邦夫  名古屋大学, 遺伝子実験施設, 准教授 (90223297)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード次世代ゲノムライブラリー作成 / ゲノム解析 / 好塩性古細菌 / UV照射 / 突然変異 / 微生物 / 好アルカリ性古細菌 / 走性
研究実績の概要

令和2年度は、高度好塩性好アルカリ性古細菌ナトロノモナスを使用したUV照射変異実験を中心にプレート単位での大量培養、ゲノムDNA抽出とゲノムシーケンス解析を行った。
UV照射実験では、照射位置におけるUV線量を正確に測定する目的で、UV照射光(クロスリンカーのUV蛍光管を1本に減らして使用)が安定化した後に、リモートで開閉する装置を作成した。この際に、UV変異を導入する菌懸濁液のセット位置付近にUV線量計を設置して、実際に照射したUV線量をエネルギー量(J/m2)として確認できるように工夫した。この装置を使って、未照射群(UV照射装置に入れて1分ほどおいたが、蓋を開かなかった試料)と大まかに3段階の異なるエネルギー群(15, 50, 100 J/m2)に分けて照射する実験を独立して30回程度繰り返し行った。4つの群それぞれから90サンプルをランダムに抽出して、合計360サンプルからゲノムライブラリー調製を行った。ここでは、96のディープウェル用の振盪培養装置(一昨年導入)使って効率的に培養すると同時に、効率的な培養液の量と振盪条件に工夫を行った。それに続くゲノムDNA調製も、96プレートのまま進められるプロトコルを更にチューニングした。さらに、昨年度に工夫したビーズ上でタグメンテーションを行うライブラリー調製法を96プレート単位で行ことで、効率的な大量ライブラリー調製方法が完成した。ゲノムDNAの段階とライブラリー作成の最後の段階で96サンプルすべてにおいて、そのDNA量をサイバーグリーンによる蛍光法で定量し、最後のライブラリーはキャピラリーシーケンサーを使用してDNAのサイズ分布も調べた。シーケンス結果は、まだ戻ってきていないので、解析できていない。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

令和2年度は、新型コロナウイルス感染防止対策による学生、研究員の実験制限による遅延と、申請者のエフォートの変化(リモート授業準備など)の影響が大きく出て、細かいトラブルシューティングに対して、迅速な対応ができなかった。また、経費節減のためシーケンス解析を外注しているが、サンプル輸送に関する時間が、これまでより長くかかっている。

今後の研究の推進方策

当初の予定の順序とは逆になるが、まず好塩性古細菌の変異体を大量に作成し、そのゲノム構造を1000株ほど決める作業を続けると同時に、続いて真正細菌(Vibrio)のUV変異導入ーゲノム解析の実験を行う。余裕があれば、真核微生物(Schizosaccharomyces pombe)も比較対象に加えたい。
また、作成した変異体を保存する方法(グリセロール冷凍保管)を工夫すると同時に、すべての作成した古細菌変異株の走性に関するスクリーニング実験を行う。さらに、スクリーニング方法を工夫して、いくつかの表現型(抗生物質耐性、栄養要求性、窒素飢餓応答等)に対して、作成した同じ変異体ライブラリー(1000クローン)を使ってスクリーニングし、ゲノムシーケンス配列と直結した絞り込み作業を行う。これによって、それぞれの表現型が持つシステムサイズを見積もる。この段階では、各表現型の詳細には入り込まず、1000種類程度のランダム変異体ライブラリー(平均、10箇所程度に変異を持つ)のスクリーニング効率を検証することを第一目標にする。また、リソースの保存方法にも注意を払い、-80℃での保存でどの程度再生してくるのか?についても半年から1年ごとに調べ、これに関してもゲノム変異との相関を見る。
ビーズ上で行うタグメンテーション法は、市販の試薬を準用しているが、これにコストがかかる。そのため、大腸菌で発現したTn5トランスポゼース(ここまでは構築済み)をアビジンビーズ上に固定化する作業までを自作しようと計画に加えた。現在、1サンプルのゲノム解析にトータル1200円程度かかっているが、この作業によって500円以下にできるので、少し回り道してでも自作Tn5-ビーズでのタグメンテーションライブラリー法を作成して、大量変異導入システム解析の基盤を作りたい。変異体リストは、データベース化し、公開する予定である。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルス流行のため、学会発表がことごとく中止またはリモート形式となり、旅費分など次年度に繰り越した。また、シーケンス外注も年度末ギリギリだったため、処理が次年度に繰り越しになったため。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Loss of cell wall integrity genes cpxA and mrcB causes flocculation in Escherichia coli2021

    • 著者名/発表者名
      Sugawara Keita, Toyoda Hayato, Kimura Mami, Hayasaka Shunsuke, Saito Hiromi, Kobayashi Hiroshi, Ihara Kunio, Ida Tomoaki, Akaike Takaaki, Ando Eiji, Hyodo Mamoru, Hayakawa Yoshihiro, Hamamoto Shin, Uozumi Nobuyuki
    • 雑誌名

      BIOCHEMICAL JOURNAL

      巻: 478 ページ: 41-59

    • DOI

      10.1042/BCJ20200723

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Presynaptic MAST kinase controls opposing postsynaptic responses to convey stimulus valence in Caenorhabditis elegans.2020

    • 著者名/発表者名
      Shunji Nakano, Muneki Ikeda, Yuki Tsukada, Xianfeng Fei, Takamasa Suzuki, Yusuke Niino, Rhea Ahluwalia, Ayana Sano, Rumi Kondo, Kunio Ihara, Atsushi Miyawaki, Koichi Hashimoto, Tetsuya Higashiyama, Ikue Mori
    • 雑誌名

      Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America

      巻: 117 ページ: 1638-1647

    • DOI

      10.1073/pnas.1909240117

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Energetics and kinetics of substrate analog-coupled staphylococcal nuclease folding revealed by a statistical mechanical approach.2020

    • 著者名/発表者名
      Mizukami T, Furuzawa S, Itoh SG, Segawa S, Ikura T, Ihara K, Okumura H, Roder H, Maki K
    • 雑誌名

      Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America

      巻: 117 ページ: 19953-19962

    • DOI

      10.1073/pnas.1914349117

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] The role of ROC75 as a daytime component of the circadian oscillator in Chlamydomonas reinhardtii2020

    • 著者名/発表者名
      Matsuo Takuya, Iida Takahiro, Ohmura Ayumi, Gururaj Malavika, Kato Daisaku, Mutoh Risa, Ihara Kunio, Ishiura Masahiro
    • 雑誌名

      PLOS GENETICS

      巻: 16 ページ: e1008814

    • DOI

      10.1371/journal.pgen.1008814

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Haloarcula mannanilytica sp. nov., a galactomannan-degrading haloarchaeon isolated from commercial salt2020

    • 著者名/発表者名
      Enomoto Shigeaki, Shimane Yasuhiro, Ihara Kunio, Kamekura Masahiro, Itoh Takashi, Ohkuma Moriya, Takahashi--Ando Naoko, Fukushima Yasumasa, Yoshida Yasuhiko, Usami Ron, Takai Ken, Minegishi Hiroaki
    • 雑誌名

      INTERNATIONAL JOURNAL OF SYSTEMATIC AND EVOLUTIONARY MICROBIOLOGY

      巻: 70 ページ: 6331-6337

    • DOI

      10.1099/ijsem.0.004535

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] ゲノムから見直す微生物分類の再考ーーーVibrio alginolyticusの場合ーーー2021

    • 著者名/発表者名
      上坂一馬,井原邦夫
    • 学会等名
      第15回 微生物ゲノム学会

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公開日: 2021-12-27  

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