研究課題
DNA修復経路であるHDRとNHEJの活性の指標となるTraffic Light Reporter (TLR)を、ヒト白血球由来K562細胞に対してNucleofectionにより導入し、薬剤選択および1細胞クローニングを行った。その結果、TLRが25コピー導入された細胞を樹立することに成功した(K562-TLR細胞)。次にCas9とgRNAを一過的に発現させた上で、鋳型DNA配列を導入してCRISPR/Cas9を誘導させたところ、TLRによる2種の蛍光(GFP:HDR およびmCherry:NHEJ)を確認することができた。さらに、安定的なCRISPR/Cas9の発現を目指して、Tet発現誘導Cas9とgRNAをK562-TLR細胞に対して導入し、薬剤選択後に1細胞クローニングを行った。取得したいくつかのクローンに対し、doxycyclinの添加によってCRISPR/Cas9を誘導し、Cas9タンパクの発現をWestern blottingおよび免疫染色によって確認した。Cas9の発現が確認できたcloneについては細胞数を増やし、鋳型DNA配列を導入した後にdoxycyclinの添加によってCRISPR/Cas9を誘導し、FACSを用いて2種の蛍光頻度を解析した。その結果、クローンによって総蛍光細胞数に大きな差異が見られることが確認された。なお、HEK293T細胞由来のcDNAライブラリの作製は既に終えており、細胞が出来次第スクリーニングを開始できる状態にある。
3: やや遅れている
当初はCas9の発現が見られたいくつかの細胞クローンを取得して実験をしようと思っていたが、安定したCas9の発現がなかなか確認できず、またFACS解析によるとCRISPR/Cas9の誘導されやすさもクローンによって差が大きいというのは予想外の結果で、スクリーニングに使用するクローンの選別に時間がかかっている。産休・育休の取得、またコロナウイルスの感染拡大防止のため、安定して実験できる環境にない状況が続いているが、今年度はスクリーニング実験まで進めたいと考えている。
1細胞クローニングを経て得られたクローンのうち、TLRの総蛍光細胞数が多く、CRISPR/Cas9が誘導されやすいものを株化してスクリーニングに用いる。また、Cas9D10Aは野生型 Cas9と比べるとNHEJの割合が減少することが予想されるためHDRが優位に働くことが期待される。よって、これについても同様の方法で細胞を作製して株化を行う。cDNAライブラリも既に作製済みのため、細胞樹立次第、スクリーニング実験を進める予定である。
スクリーニング実験が始まると、高額な次世代シーケンサー関連の試薬などに計上する必要があり、次年度に使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件)
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