研究課題/領域番号 |
19K06632
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
水野 智亮 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (80529032)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 小胞体ストレス / キナーゼ / ホスファターゼ |
研究実績の概要 |
真核生物では、小胞体に不良タンパク質が蓄積すると、小胞体ストレス応答経路が活性化し、遺伝子発現を介した不良タンパク質の除去、およびグローバルな翻訳抑制を介した小胞体への負荷軽減が誘導される。出芽酵母ではIre1経路が小胞体ストレス応答において中心的役割を果たしている。一方で、出芽酵母非必須遺伝子破壊株の約3%が小胞体ストレス誘導剤に対して感受性を示すことから、多数の遺伝子が小胞体ストレス応答に関与していると考えられる。しかしながら、それらのほとんどについて小胞体ストレス応答における作用機序は明らかになっていない。タンパク質リン酸化は、様々な環境変化に対する細胞応答に関与している。ストレス応答においても多数のキナーゼ・ホスファターゼが機能しており、出芽酵母では、Hog1やMpk1 などのMAPK、Snf1 AMPK、カルシニューリンなどが小胞体ストレス応答に機能している。しかしながら、これら既知の因子でさえ、小胞体ストレス応答における活性制御機構や標的因子が十分に分かっていない。したがって、出芽酵母小胞体ストレス応答におけるキナーゼ・ホスファターゼの制御機構と役割には未解明な部分が多く残されている。このような学術的背景から、私は、キナーゼ・ホスファターゼがどのように活性化され、どのように機能し、どのように不活性化されていくのか、また、お互いがどのようにコミュニケーションしているのかを明らかにすることを目的とし、出芽酵母小胞体ストレス応答で機能するキナーゼ・ホスファターゼを網羅的に抽出することにした。今年度は、出芽酵母キナーゼ全123種・ホスファターゼ全35種について変異株作製とその小胞体ストレス感受性検定を完了し、変異株が小胞体ストレス感受性を示す34種と耐性を示す16種を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
出芽酵母の全キナーゼ・ホスファターゼについて変異株を作製し、小胞体ストレス感受性もしくは耐性を示す変異株を一定数見出すことができ、今後解析対象とすべき因子を明らかにすることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
まず抽出した因子群が既知の小胞体ストレス応答機構を制御しているか検討する。出芽酵母では、Ire1経路、Hog1 MAPK、Mpk1 MAPK、Snf1 AMPK、Calcineurinが小胞体ストレスによって活性化する。私は既に、文献上の報告と独自の解析に基づき、小胞体ストレスによる各経路の活性化に応じて発現が誘導される遺伝子を見出し、real time PCRによって各経路の活性化状態をモニターできる実験系を立ち上げている。そこで、この実験系を用いて、小胞体ストレス感受性もしくは耐性がみられたキナーゼ・ホスファターゼ変異株における既知小胞体ストレス応答経路の活性化状態を調べる。既知小胞体ストレス応答経路の活性化状態に変化が見られた因子群については、その作用点・作用機構を明らかにすべく、既知小胞体ストレス応答経路構成因子の発現量・細胞内局在・活性を調べる。既知小胞体ストレス応答経路の活性化状態に変化が見られた因子群については、RNA-seqによって遺伝子発現量を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)変異株の作製と小胞体ストレス感受性の検討が順調に進行し、当該実験において使用するプラスチック器具類・培地類・試薬類・酵素類の経費を削減できたため。 (使用計画)real time PCRとRNA-seqの精度を高めるため、当該実験において使用するキット類・酵素類の購入に充てる。
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