不良タンパク質の小胞体への蓄積によって引き起こされる小胞体ストレスに対して、細胞は、遺伝子発現を介した不良タンパク質の除去、およびグローバルな翻訳抑制を介した小胞体への負荷軽減をおこなう。前年度までに我々は、出芽酵母を用いて、細胞内内容物の分解とリサイクルに関与する基本的なプロセスであるオートファジーが小胞体ストレスによって誘導されるか検討し、1)小胞体ストレスによって小胞体選択的オートファジー特異的因子Atg39の発現上昇と小胞体選択的オートファジーの誘導が引き起こされること、2)Atg39の発現上昇はATG39プロモーターの活性化を介しており、Snf1 AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)によって正に、転写抑制因子Mig1/2によって負に制御されていること、3)小胞体ストレスによって活性化したSnf1はMig1/2の核外輸送を促進することを見出し、小胞体ストレス応答においてSnf1はMig1/2を負に制御することによって、ATG39と小胞体選択的オートファジーを活性化することを明らかにした。しかしながら、Snf1欠損株でも小胞体ストレスによるAtg39の発現誘導は残存していたことから、Snf1- Mig1/2経路以外にもAtg39の発現を誘導する経路が存在することが示唆された。そこで、本年度はATG39プロモーター活性制御因子の遺伝学的スクリーニングをおこなった。その結果、1)転写活性化因子Msn2/4がATG39プロモーター活性を正に制御すること、2)小胞体ストレスによってMsn2/4の核局在が誘導されること、3)小胞体ストレスによるMsn2/4の核局在はプロテインキナーゼA(PKA)によって負に制御されることを見出し、小胞体ストレスによってPKAが抑制されるとMsn2/4の核局在が誘導され、ATG39と小胞体選択的オートファジーを活性化することを明らかにした。
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