多細胞生物にとって細胞間コミュニケーションは個体維持のために必須のものである。近年になり、細胞外には多くの細胞外小胞が存在し、その細胞外小胞にはRNAやタンパク質が封入されているものもあることが明らかとなってきた。この細胞外小胞に含まれる因子は、血流などにより遠く離れた組織まで運ばれ、元とは異なる細胞内に取り込まれ、細胞外小胞に含まれていた因子は本来とは異なる場所でも機能することが示された。つまり、ある細胞で作られた機能分子が、異なる細胞に直接投入され機能し、細胞の性質を変えていることが示されたのである。我々の身近な例をあげれば、がんの転移は細胞外小胞が寄与していいると考えられており、細胞外小胞はがんのバイオマーカーとしても重要さを増している。 このように細胞間コミュニケーションに重要な役割を果たしている細胞外小胞であるが、どのように作られているのか、その分子メカニズムはほとんど不明である。そこで本研究では、新しい細胞外小胞形成分子メカニズムを明らかにすることを目的とし研究を行った。本研究で申請者は、細胞膜表面に突起構造を作ることができるI-BARタンパク質群に着目し、I-BARタンパク質のI-BARドメインの重合により細胞膜表面には突起構造ができること、このIーBARタンパク質により作られた細胞表面の細胞膜突起は血流などの物理的な弱い力でも十分切断され細胞外小胞が作られることを示し、新しい細胞外小胞形成の分子メカニズムを提唱することができた。
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