研究課題
基盤研究(C)
上皮組織は、組織を構成する細胞の伸縮を制御することで、発生やその恒常性維持における完全性を保ち、生体内部を外部環境から密閉することができる。また、創傷治癒における集団細胞運動のように、組織を構成する上皮細胞の固有の収縮力を動的に調節することで、組織の完全性を環境応答的に維持する。本研究プロジェクトでは、上皮細胞接着複合体の可塑性を通して個々の細胞が収縮力を調節する仕組みに着目し、上皮細胞シートの恒常性維持に寄与するメカニズムを解明している。
細胞生物学
上皮細胞間の張力の均衡は、上皮細胞シートの恒常性に必須である。このような細胞同士の間に生じる機械的な張力を介した情報伝達は、上皮細胞の増殖や運動を制御する重要な役割を担うことが近年明らかになっており、今回の成果は、上皮細胞の異常によって生じる癌の病態解明にもつながることが期待される。また、上皮細胞シートの恒常性の破綻は、アトピー性皮膚炎や炎症性腸疾患などの慢性炎症を引き起こすことが明らかになっており、今回の発見は慢性炎症疾患に対する新たな予防法や治療法を開発する上で基礎となる知見である。