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2020 年度 実施状況報告書

出芽酵母におけるM期離脱シグナル伝達経路の非対称性の分子機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 19K06641
研究機関九州大学

研究代表者

前川 裕美  九州大学, 農学研究院, 講師 (80399683)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードMitotic Exit Network / Ogataea polymorpha / 出芽酵母 / SPB
研究実績の概要

出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeのSpindle Pole Body (SPB)は、MENシグナル伝達経路及びスピンドル配向チェックポイント(Spindle Orientation Checkpoint, SPOC)の場として細胞周期制御に重要な役割を果たす。類似のSIN経路が分裂酵母にも保存されているが、キナーゼカスケードが1ステップ多い。S. cerevisiaeとは進化的に離れたメタノール資化能を持つ出芽酵母Ogataea polymorphaのMEN因子ホモログを検索したところ、MEN kinaseであるScCdc15の明確なオーソログは見出せなかった。、分裂酵母の2つのSIN キナーゼと系統的に近い2つのSte20様キナーゼ(OpHcd1とOpHcd2)を見出した。OpHcd1, OpHcd2は共に必須遺伝子であり、ATPアナログ感受性変異(as変異)或いはデグロン法を用いて構築した条件変異株は分裂期後期遅延の表現型を示したことから、O. polymorphaはHcd1とHcd2をキナーゼ因子とするSIN型のシグナル伝達経路を持つことが分かった。
S. cerevisiaeではMENキナーゼScCdc15は母細胞と娘細胞の2つのSPBに局在するのに対して、O. polymorphaのHcd1及びHcd2は母細胞のSPBにのみ局在しており、O. polymorphaのMENは母細胞のSPBでのみ活性化することが示唆された。更に、Hcd2のSPB局在は上流因子Tem1 GTPaseの活性化に依存しているのに対して、Hcd1のSPB局在にはPoloキナーゼOpCdc5が必須であった。ScCdc15に対する類似の制御が知られており、O. polymorphaにおいては時間的・空間的なMEN活性制御を2つのキナーゼが分担している可能性が考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

顕微鏡観察には高感度の顕微鏡を必要とするため、他府県の研究協力先の研究室で行ってきたが、コロナ禍による移動自粛の影響で顕微鏡観察実を一部やり残している。
これまでに実施した解析から、O. polymorphaのMENの分子構成は分裂酵母のSINに類似しているが、局在・活性化制御はMENとの類似性が見られており、SIN様の祖先型からMENへと進化する中間的な制御機構を持つことが明らかになりつつある。また、条件変異株構築の為のツールを改良することにより、昨年までは困難であったHCD2遺伝子の条件変異株を作製することができ、表現型解析が可能になった。
また、質量分析法を用いて、スピンドル配向チェックポイント(SPOC)によるMEN制御に重要と考えられる Bfa1蛋白質のリン酸化部位を同定済みであり、現在はリン酸化変異株の構築と表現型の解析を進めている。
以上、実験は着実に進んでおり、研究遂行の見通しは立っているが、コロナ禍の影響による多少の進捗の遅れはある。

今後の研究の推進方策

分裂酵母とは異なり、出芽酵母は母細胞-娘細胞間に強い細胞極性があること、細胞質分裂部位がスピンドル配置とは無関係に決まっているなど、出芽による細胞分裂の特徴がある。出芽酵母MENと分裂酵母SINの活性制御の詳細に相違が見られるが、これはMENが出芽様式から生じるニーズに合うように進化したのかもしれない。そこで、祖先型と考えられるSINと類似のO. polymorphaのMEN制御機構がS. cerevisiaeのMENの比べて不十分な点があるかを検証していく。S. cerevisiaeではスピンドル配向不全時にはスピンドル配向チェックポイント(SPOC)によるMENの厳密な制御が生存に必須であることが明らかになっている。O. polymorphaにおいて高頻度にスピンドル配向不全を起こす変異株は増殖遅延が見られることから、SPOC機構が脆弱である可能性を考えている。2つの酵母では、SPOC制御の鍵であるKin4キナーゼ相同因子の細胞内局在に相違があることに注目し、O. polymorpha におけるKin4相同キナーゼの局在制御に関わる因子の解析を進めていく方針である。

次年度使用額が生じた理由

高感度顕微鏡を有する大阪大学(現・東京大学)・加納純子研究室で行なう顕微鏡観察実験の為に、4-5回の県外出張予定であったが、コロナ禍のため一度しか訪問できなかった。また、コロナ感染拡散防止対策のため、学内への立ち入り・共通設備利用の制限があり、予定していた蛋白質精製・質量分析を次年度に実施することにした。2021年度においては、顕微鏡観察を集中的に行うための出張旅費、質量分析による蛋白質リン酸化部位同定の為の試薬・解析委託料などに使用する計画である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2020

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Characterization of N- and O-linked galactosylated oligosaccharides from fission yeast species2020

    • 著者名/発表者名
      Fukunaga Takamasa、Tanaka Naotaka、Furumoto Toshio、Nakakita Shinichi、Ohashi Takao、Higuchi Yujiro、Maekawa Hiromi、Takegawa Kaoru
    • 雑誌名

      Journal of Bioscience and Bioengineering

      巻: 130 ページ: 128~136

    • DOI

      10.1016/j.jbiosc.2020.03.008

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Yeast Flocculin: Methods for Quantitative Analysis of Flocculation in Yeast Cells2020

    • 著者名/発表者名
      Maekawa Hiromi、Takegawa Kaoru
    • 雑誌名

      Methods in Molecular Biology

      巻: 2132 ページ: 437~444

    • DOI

      10.1007/978-1-0716-0430-4_42

    • 査読あり
  • [学会発表] 非モデル酵母におけるM期離脱シグナル伝達経路の解析2020

    • 著者名/発表者名
      前川裕美
    • 学会等名
      分子生物学会第43回年会

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公開日: 2021-12-27  

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