研究課題
メラニンは、有害な紫外線から細胞を守るために重要な役割を果たすが、その一方で、ケラチノサイトにおける過剰なメラニンの沈着はしみやそばかすの原因ともなり、メラニン量を適切に制御することは生活の品質向上に不可欠である。メラニンは、表皮基底層に存在する色素細胞においてメラノソームと呼ばれる特殊なオルガネラ内で合成・貯蔵されている。そして、色素細胞は樹状突起を伸長させ、隣接するケラチノサイトや毛母細胞とシナプスを形成することで、それらの細胞にメラニンを受け渡し、皮膚や毛髪が暗色化する。これまで、メラノソームの成熟機構や細胞骨格に沿ったメラノソームの輸送機構について、特にRab型低分子量Gタンパク質の機能解析を中心に研究を展開してきている。Rabと同じく細胞内小胞輸送を調節するArf型低分子量Gタンパク質についてはその機能は不明な点が多い。本研究は、小胞輸送調節やアクチン骨格再編成などに関わる低分子量Gタンパク質Arf6に着目し、色素細胞におけるArf6の生理機能を細胞レベル・個体レベルで解析することで、未だ理解が進んでいない色素細胞の樹状突起形成過程を解明し、色素細胞における小胞輸送機構の包括的理解を目的としている。本年度は、培養色素細胞を用いたArf6の機能を解明するうえで、その機能を抑制した際に生じる表現型の確認を中心に研究を進めた。2019年度は、Arf6ノックダウン色素細胞では、フォルスコリンによって惹起した樹状突起形成がコントロール群に比して有意に減少することを確認した。すなわち、Arf6により形成される色素細胞樹状突起形成には、cAMPにより制御されるシグナル系が深く関わることを見出した。
2: おおむね順調に進展している
予備的検討により得ていたArf6よる色素細胞樹状突起形成能への関与について、マウス培養色素細胞を用いて、内在するArf6をノックダウンし、フォルスコリン処理による色素細胞の樹状突起形成が顕著に抑制されることを見出したことから、当初の研究計画通りに遂行できているもの考えられる。
色素細胞特異的Arf6欠損マウスの準備が整ってきたため、今後はこのMC-Arf6 cKOマウスの皮膚メラニン沈着に焦点を当てて解析を推進していく。また、Arf6は色素細胞の樹状突起形成だけでなく、メラノソーム形成・成熟過程にも関与しているとの予備的知見を得た。したがって、今後は色素細胞の活性化に関して、樹状突起形成・メラニン合成酵素(チロシナーゼやチロシナーゼ関連タンパク質1など)のメラノソームへの輸送過程にも着目して解析することも併せて検討する。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
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