真核細胞内では小胞輸送を介して盛んに物質や情報のやりとりが行われている。この小胞輸送はオルガネラ間の脂質成分のやりとりを伴うため、物質輸送だけでなく、オルガネラの形成・形態維持とも密接に関わる反応であることが示唆されている。しかし、小胞輸送による膜の流れを制御・調節するしくみについての知見は驚くほど少ない。 本研究では、出芽酵母の小胞体-ゴルジ体間の小胞輸送をモデル系として、この反応に関わるCOPII因子群、および輸送小胞の形成が行われる小胞体出口部位の形成で中心的な役割を担うSec16が受けるリン酸化・脱リン酸化に着目し、小胞体-ゴルジ体間の小胞輸送がリン酸化・脱リン酸化により制御されるメカニズムと、それに関わるオルガネラ形成についての徹底的な理解を目指す。 令和5年度は、前年度までに同定した、PP2Aホスファターゼが脱リン酸化するCOPIIコートサブユニットのT21残基について、引き続きこの部位のリン酸化・脱リン酸化が小胞体からの小胞輸送やオルガネラの形態形成におよぼす影響について解析を行った。前年度までに作成したT21残基を非リン酸化残基、あるいは疑似リン酸化残基に置換したCOPIIコートサブユニットを発現する酵母株を用いて、これらの小胞体-ゴルジ体間における小胞輸送機能や、これにともなう小胞体やゴルジ体の形態形成能について解析を行った。 また、Sec16について、小胞体出口部位が形成される際に小胞体膜に局在するSec12ホモログであるSed4と相互作用する領域を同定した。さらに、Sed4が小胞体膜中で自己集合し、これがSec16と相互作用することで小胞体出口部位が形成されることを明らかにした。
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