研究実績の概要 |
①昨年度行った tRNA-FRB結合の構造生物学的解析により、tRNAはFRBに結合することが確認された。加えて、tRNA-FRB結合様式はrapamycin-FRB結合とほぼ同様であることも判明した。これにより、人工的な阻害剤rapamycinと違い、tRNAは細胞にとって生理的なTORC1活性制御因子であることが強く示唆された。更に、rapamycin-m(mammalian)TORC1の構造はクライオ電顕によって解かれており、rapamycin はFRBとTORC1コンポーネントの1つraptorによりできたポケット様構造に嵌まるように結合している。それをtRNA-TORC1結合に当てはめてみると、rapamycin同様、tRNAもFRBとKog1(酵母raptorホモログ)のポケットに嵌まるように結合することが推測された。 ②続いて今年度は、①から得られたtRNA-TORC1結合想像図を基に、tRNA結合に必要であると推測される正の電荷を持つアミノ酸残基(K, R, H)に変異を入れた。4カ所のアミノ酸残基に変異を入れたFRBドメインはゲルシフトアッセイによりtRNA結合能が失われていることが解った。さらにKog1のtRNA結合に関与すると推測される3カ所のアミノ酸残基にも変異を入れ、変異TORC1を作製した。これを酵母細胞で発現させその表現型を観察したところ、窒素源飢餓に応答したTORC1不活性化に著しい遅延が見られた。これは、tRNAをアミノ酸飢餓シグナルとしたTORC1制御モデルを大きく支持する結果である。
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