研究課題/領域番号 |
19K06669
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
戸島 拓郎 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究センター, 上級研究員 (00373332)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 成長円錐 / ゴルジ体 / カルシウム / 軸索ガイダンス / 生細胞イメージング |
研究実績の概要 |
ゴルジ体はタンパク質の翻訳後修飾や選別輸送を司る膜交通(membrane traffic)のキーステーションである。小胞体やミトコンドリアと同様に、ゴルジ体には高濃度Ca2+が内蔵されているが、その役割については不明の点が多い。本申請課題では、特に神経回路形成時の神経軸索ガイダンスに焦点を当て、ゴルジ体Ca2+シグナルが生命機能に果たす役割を解明する。具体的には、ゴルジ体内腔Ca2+が積荷タンパク質の糖鎖修飾や選別輸送を制御したり、細胞質Ca2+シグナル発生のための供給源として働く可能性などについて検証する。平成31年度までに、ゴルジ体内腔Ca2+プローブを作製し、実際にゴルジ体内腔のカルシウム変動を検出できた。 令和2年度は、作製したゴルジ局在型Ca2+プローブ(緑色)と、細胞質局在型Ca2+プローブ(赤色)を細胞に共発現させ2色同時観察を行った。その結果、ゴルジ体内腔Ca2+濃度の減少に伴って細胞質Ca2+濃度上昇が観察された。すなわちゴルジ体がCa2+ストアとして働くことの状況証拠が得られた。次に、ゴルジ体Ca2+シグナルに連動した積荷輸送を可視化するためのツールを作製・最適化した。具体的には、神経細胞に発現する積荷タンパク質を積荷としたRUSHシステム用コンストラクトを作製し、神経細胞に導入したところ、HeLa細胞等に導入した際に比べると発現量が低かったので、mNeonGreenやmScarletといった明るい蛍光タンパク質への変更やプロモーターなどを再検討し、従来よりも非常に明るく観察できるプローブが完成した。また、ゴルジ体Ca2+シグナルに応じた糖鎖修飾の解析への足掛かりとして、各種レクチンを用いた細胞染色の実験系を立ち上げた。さらに、今後の実験に必要な、細胞局所でケージドCa2+の光乖離を可能とする顕微鏡システムを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述のように、新規プローブによるゴルジ体内外のCa2+動態が可視化できたことや、積荷可視化ツールの最適化、さらには顕微鏡システムの構築もほぼ完了したため。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、完成した各種ゴルジ体内腔Ca2+プローブ・積荷可視化ツールを用いて、以下のような実験に取り組む。(1)微細ガラスピペットにより成長円錐に軸索ガイダンス因子を作用させた際のゴルジ内腔Ca2+変動と、それに連動した神経細胞に特異的な積荷輸送・糖鎖付加の動態を解析する。(2)遺伝子コード型ケージドCa2+であるPACRをゴルジ槽局在化シグナルに付加した光遺伝学ツールを作製し、光刺激により任意のゴルジ槽においてCa2+シグナルを発生させ、これとRUSHによる積荷輸送解析・糖鎖解析を組み合わせることで、ゴルジ体内腔Ca2+とゴルジ体機能、成長円錐運動との因果関係を証明する。
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