ゴルジ体はタンパク質の翻訳後修飾や選別輸送を司る膜交通(membrane traffic)のキーステーションである。小胞体やミトコンドリアと同様に、ゴルジ体には高濃度カルシウムが内蔵されているが、その役割については不明の点が多い。本申請課題では、特に神経回路形成時の神経軸索ガイダンスに焦点を当て、ゴルジ体カルシウムシグナルが生命機能に果たす役割を解明する。具体的には、ゴルジ体内腔カルシウムが積荷タンパク質の糖鎖修飾や選別輸送を制御したり、細胞質カルシウムシグナル発生のための供給源として働く可能性などについて解明することを目標としている。昨年度までに、ゴルジ体各槽内腔カルシウムプローブを作製し、実際にゴルジ体内腔のカルシウム変動を検出できた。さらに、作製したゴルジ局在型カルシウムプローブ(緑色)と、細胞質局在型カルシウムプローブ(赤色)を細胞に共発現させ2色同時観察を行い、ゴルジ体内腔カルシウム濃度の減少に伴って細胞質カルシウム濃度上昇が観察された。すなわち、ゴルジ体がカルシウムストアとして働くことの状況証拠が得られた。 これに引き続き本年度は、ゴルジ内腔で働くカルシウム結合タンパク質と、ゴルジ体カルシウムポンプについての解析を開始した。両者の蛍光タグつきコンストラクトを作製し、それらが局在するゴルジ槽を検証した。さらに、カルシウム結合タンパク質と糖転移酵素の相互作用などを検証し、ゴルジ内腔カルシウムシグナルとゴルジ機能との連関を示唆するデータが得られつつある。
|