研究課題
本研究は、腎尿細管の再生に関わる遺伝子群の非コードDNA領域の機能を俯瞰的な視点から捉え、個体内でのネフロン再生を可能とさせるシス調節メカニズムの全容解明を目指すものである。この目的で、腎尿細管の再生過程をライブイメージングできるトランスジェニック・ツメガエルから摘出した再生中の腎管細胞の網羅的オープンクロマチン領域解析と、再生組織でのin vivoエンハンサー同定法によるオープンクロマチン領域の個体内機能解析から、実際の再生中の腎管で使われる全エンハンサーの同定を行うことにした。具体的には、(1) 腎尿細管の再生中の細胞における網羅的オープンクロマチン領域解析、(2) 再生中の腎尿細管で活性をもつエンハンサーの網羅的探索、(3) オープンクロマチン領域で実際にエンハンサー活性を持つ領域で共通してみられる転写因子結合モチーフから新規の再生エンハンサーの活性化メカニズムの解明を計画している。本年度は、「新学術領域「学術研究支援基盤形成」先進ゲノム支援」の協力の下に、損傷前、再生2日目、再生5日目の網羅的オープンクロマチン領域の解析を行った。また、オープンクロマチン領域にエンリッチしている転写因子結合モチーフの探索と、オープンクロマチン領域の一部について個体内でのエンハンサー活性の有無を検討した。
1: 当初の計画以上に進展している
本年度は、腎尿細管の再生中の細胞における網羅的オープンクロマチン領域解析を行う予定であった。研究実績の概要で述べたように、先進ゲノム支援の協力の下で、損傷前、再生2日目、再生5日目の網羅的オープンクロマチン領域解析を行い、損傷前のゲノムで特異的にクロマチン構造がオープンになっている領域が1076ヶ所、再生2日目で特異的にオープンである領域が1265ヶ所あることがわかった。この1265ヶ所のオープンクロマチン領域にエンリッチしている転写因子結合モチーフについてHOMERを用いて探索したところ、エピゲノム関連の転写因子や発生再生に関わる転写因子の結合モチーフがエンリッチしていることがわかった。また、オープンクロマチン領域の一部について個体内でのエンハンサー活性の有無を検討し、再生中の腎尿細管でエンハンサー活性を持つことがわかった。
研究実績の概要で述べたように、オープンクロマチン領域について、ツメガエルのトランスジェニックシステムを用いて、再生中の腎尿細管で活性をもつエンハンサーの網羅的な探索を行う。また、ヒストン H3とK27 のアセチル化(H3K27ac)は、エンハンサーとの相関が示されており、損傷前、再生2日目、再生5日目のH3K27ac領域のクロマチン免疫沈降シーケンスを行い、エンハンサーの絞り込みも進める予定である。
本年度は再生中の腎管細胞の網羅的オープンクロマチン領域解析を行う予定であったが、「新学術領域「学術研究支援基盤形成」先進ゲノム支援」の支援により解析を行ったため、それに係る経費が未執行となった。先進ゲノム支援の協力の下に得たデータについて解析をし、追加で必要となった実験等について本年度に執行予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
Developmental Cell
巻: 50 ページ: 155-166
doi: 10.1016/j.devcel.2019.05.025
Scientific Reports
巻: 9 ページ: 12560
doi.org/10.1038/s41598-019-48979-4