研究課題/領域番号 |
19K06675
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
友常 大八郎 信州大学, 学術研究院医学系, 助教 (80283802)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 多能性幹細胞 / ポリコーム遺伝子 |
研究実績の概要 |
ヒトiPS細胞などの多能性幹細胞は、様々な細胞に分化する能力を持つため、再生医療において、その細胞供給源になると期待されているが、多分化能を保持するためには、未だ分化してない未分化状態である必要があり、未分化状態が破綻すれば多能性が失われる。本計画では、自然に未分化性が破綻する状況を再現した実験系で見いだされた2つのエピジェネティック遺伝子(ポリコーム遺伝子群に属するMBTファミリー遺伝子)の機能について、特に、未分化性の破綻と正常な分化との違いに焦点をあてて解析している。 本年度はまず、未分化状態が破綻した状態がいかなるものかを知る研究を行った。我々はこれまでの研究で有用な破綻のマーカーをいくつか同定している。そこで各種分化マーカーだけでなく、破綻マーカーを用いて、レアルタイムPCR法と免疫染色法によって、破綻細胞と未分化細胞、さらに、正常な分化(内胚葉方向)を始めた細胞について発現解析を行った。その結果、破綻した細胞は正常な分化細胞とは異なるもので、その特徴的な発現パターンの傾向も明らかになった。 また、これらの研究とともに、いくつかのMBTファミリー遺伝子(L3MBTL1とFMBT2、L3MBTL2)を強制発現する実験系を作り、未分化性の変化を解析している。薬剤耐性遺伝子を用いることで課題であった感染効率も上がった。そして、その結果として、破綻した多能性幹細胞に導入すると、L3MBTL1やFMBT2の強制発現によって破綻状態が元に戻るということが確認されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多能性幹細胞の未分化状態が破綻するパターンやその正常分化との違いについて、知見が深まっている。また、前年度から継続してウイルスを用いた強制発現実験も、課題であった感染効率を上げることに成功するなど進展が見られる。 さらに継続して行っている網羅的解析(データ解析)でも新たな知見が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
2年目は、ChIP法によるMBTファミリーの標的遺伝子解析を予定している。ChIP-seqによる解析を検討しているが、高額な解析であるため、価値ある解析が出来るようにサンプルの準備を念入りにするつもりである。また、強制発現の実験も引き続き行い、それをChIP-seqのサンプルにも加える予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新たな分化誘導法を検討することで、当初の予想より、安価で解析が出来ることが分かった。次年度は網羅的解析を予定しており、大きな支出が想定されるため、次年度に回すことにした。また、年度末は新型コロナウイルスの影響で、研究活動が抑制されたことも支出が少なかった理由にあげられる。
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