研究課題/領域番号 |
19K06676
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山口 新平 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (80740795)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ES細胞 / 2細胞期胚様細胞 / Zscan4 / p53 |
研究実績の概要 |
胚性幹細胞(ES細胞)は体を構成するすべての細胞に分化しうる多分化能を有し、正常な核型を維持したまま、ほぼ無限に培養可能である。樹立済みのES細胞中には、2細胞期胚に特異的な転写因子Zscan4を発現する2細胞期胚様細胞が1%程度とごく少数存在している。ES細胞はZscan4陽性と陰性の状態を行き来して未分化状態や正常ゲノムを維持しており、これが永続的な未分化状態維持の鍵となっていると考えられている。しかし、どのような機構でZscan4陽性状態へと移行するのか、はほとんどわかっていなかった。我々は、独自のスクリーニングを通じて核小体タンパクPum3がこの移行に機能していることを見出した。Pum3を欠損したES細胞では、Zscan4陽性細胞が10倍程度増加していた。Pum3はリボソームRNAに結合することがわかっており、Pum3欠損ES細胞ではプレリボソームRNAが以上に蓄積していた。リボソームRNA生合成の異常はp53の活性化を誘導する。実際、Pum3欠損ES細胞においても、p53および活性化p53の蓄積が認められた。Pum3/p53二重欠損ES細胞では、Zscan4陽性細胞の増加は完全に抑制されており、Zscan4陽性細胞の増加はp53の活性化に依存的であることがわかった。UVや薬剤処理によってDNA損傷を誘導すると、Zscan4陽性細胞が顕著に増加し、この増加もまたp53欠損ES細胞ではほとんど生じなかった。以上の結果から、2CL細胞状態への移行はストレスによって活性化するp53が原因であることが示唆された。現在は、なぜp53の活性化によって2細胞期胚様細胞への移行が引起こされるのか、という点を明らかにするべく、実験を継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初難関の一つと目していた、「なぜPum3欠損によって2細胞期胚様細胞が増えるのか?」という疑問に関して、ほぼp53で説明できることを見出しているため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、なぜp53が活性化すると2細胞期胚様細胞への移行が促進されるのか、という疑問に答える研究に専念する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ES細胞を用いた実験が当初予定よりも順調に進んだため、予算の多くかかる動物実験解析およびゲノム解析に先んじて細胞関連実験を優先した。そのため、動物実験とゲノム解析のための予算を次年度以降に使用することとした。
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