研究実績の概要 |
2019年度までにマウスES細胞のみからの卵子作成は達成した。 2020年度はさらに、誘導卵巣体細胞(FOSLCs: Fetal Ovarian Somatic Cells)の卵胞構築ユニットを定義するための研究を実施した。はじめに最も効率よく卵胞を構築できるFOSLCsの誘導時期を検討した。その結果、卵胞構築能はFOSLCsが出現する誘導4日目から徐々に上昇し、6日目に最も高くなりその後低下してしまうことが確認された。次に、誘導6日目のFOSLCsをシングルRNA-seq解析を行なった。その結果、この時期のFOSLCsには胎齢12.5日目(E12.5)の胎児卵巣の体細胞と同様に前駆細胞、間質細胞、支持細胞群が存在していることが確認された。一方でFOS、ES細胞に組み込まれた支持細胞レポーター遺伝子であるFoxl2-tdTomato及び表面膜タンパクであるPDGFRaにより分画されることがFACS解析により確認された(前駆細胞: PDGFRa-, Foxl2-tdTomato-/間質細胞: PDGFRa+, Foxl2-tdTomato-/支持細胞: PDGFRa-, Foxl2-tdTomato+)。さらにこの各細胞群はシングルセルRNA-seq解析の結果と同様の遺伝子発現を示すことはqPCRにおいても確認されている。 次にこれらの細胞群のいずれが卵胞構築能が高いのかを調べるために誘導雌生殖細胞(PGCLCs)とそれぞれ共培養を行なった。するといずれの細胞群も生体と同等の卵を複数層の顆粒膜細胞が多いそれを莢膜細胞が取り囲む卵胞構造を再構築できたが、驚くべきことに支持細胞以外の細胞(間質細胞、前駆細胞)多くの卵胞を構築できていた。これは間質細胞が未分化性をこの時点で維持しているという過去の知見と照らし合わせ、卵胞構築ユニットでは未分化細胞が重要であることが示唆された。
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