今年度は、10世代までバッククロス が終了したGm10046ノックアウト マウスを用いて、生殖能力の有無、仔の生存、形態異常について解析した。生殖能力及び仔の生存、形態に異常は認められなかった。そこで、胎生14.5日目の大脳を回収し、抑制性神経の発生に異常が認められるか調べた。しかし、抑制性神経の異所的な誘導は認められなかった。引き続きバッククロス を進め、再度大脳における抑制性神経発生を調べることとした。 in utero electroporationを用いて、Fgf15-pCAGGSの強制発現を試みた。胎生14.5日目の大脳は、構造的にLGEへの遺伝子導入が容易である一方、異所的な誘導には遅いことがわかった。そこで、胎生13.5日目の大脳LGEへの遺伝子導入を試みた。胎生13.5日目の大脳LGEへの遺伝子導入は非常に困難であり、導入効率が著しく低下することがわかった。今後は、胎生13.5日目もしくはそれ以前の大脳を摘出した後、electroporationによる遺伝子導入を行い、スライス培養を行うことを検討している。 組織内低酸素領域の可視化をHypoxiprobeを用いて試みた。妊娠母獣の尾小脈から注入して、胚を標識する方法がすでに報告されている。その方法に従って標識を試みたが、低酸素領域を可視化することができなかった。そこで、現在、よりシグナルの安定性が高いEF5を用いた標識を計画している。 人為的に組織内酸素濃度を変化させる目的で、sFlt-1の遺伝子導入を行った。その結果、抑制性神経の発生に大きな影響は見られなかったが、予想していなかった大脳新皮質構造の形成異常が認められた。これにより、Vegfシグナルによる大脳新皮質形成機構の一端を解明することができた。
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