研究課題/領域番号 |
19K06682
|
研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
吉田 周平 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 上級研究員 (20363997)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 染色体分配 / 卵母細胞 / 紡錘体 / 動原体 |
研究実績の概要 |
染色体を分配する紡錘体が二極性であるということは染色体を正しく分配するうえで非常に重要である。多くの体細胞においては中心体が紡錘体の極性を決定づけている。しかし哺乳動物の卵母細胞は中心体を持たず、紡錘体が二極性化するのに長い時間を要し、中心体を持つ体細胞や精母細胞に比べて染色体分配異常がおこりやすい。そしてその卵母細胞における中心体非依存的な紡錘体の二極性化機構は未だ明らかになっていない。近年我々は、①マウス卵母細胞の減数第一分裂では動原体が紡錘体の二極性化に必要であるということ、さらに②卵母細胞においては減数第一分裂と第二分裂では紡錘体の二極性化機構が異なることを新たに見出した。 本研究の目的はマウス卵母細胞の減数第一分裂と第二分裂において、それぞれ異なる紡錘体の二極性化機構を明らかにすることである。 我々は、動原体に局在するリン酸化酵素の活性を阻害すると動原体に局在する微小管のクロスリンカータンパク質が減少すること、そして紡錘体の二極性化に影響を与えることを見出した。動原体に局在するリン酸化酵素が紡錘体の二極性化を制御していることが予想された。 また、減数第二分裂において増加している微小管相互作用因子群の減数第一分裂の紡錘体に与える影響を解析した。これらの因子群を減数第一分裂に過剰発現させることで紡錘体の動態に影響を与えることを見出した。 そして、動原体ー微小管接続が不安定化する変異型動原体タンパク質を卵母細胞内に発現させ、紡錘体の形態変化の解析を行った。その結果、動原体ー微小管の安定な接続は紡錘体の二極性化に必須では無いことを見出した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々は、動原体に局在するリン酸化酵素を阻害することで、動原体に局在する微小管のクロスリンカータンパク質が減少すること、そして紡錘体の二極性化が遅延することを見出した。リン酸化酵素が動原体タンパク質をリン酸化することでクロスリンカータンパク質の動原体への集積を制御し、紡錘体を二極性化していることが予想された。 また、減数第一分裂と第二分裂における紡錘体の二極性化機構の違いを明らかにするために、減数第二分裂の紡錘体において増加している微小管相互作用因子群の減数第一分裂の紡錘体への影響を解析した。これらの因子を増加させることが紡錘体の動態に影響を与えることを明らかにした。 さらに、動原体に局在する微小管のクロスリンカータンパク質を抑制しても紡錘体が二極性化することから、動原体の他の機能も紡錘体の二極性化に作用していることが予想される。そこで、動原体ー微小管接続が紡錘体の二極性化に関わっている可能性を検討した。動原体ー微小管接続が不安定化する変異型動原体タンパク質を導入し、微小管のクロスリンカータンパク質を抑制した条件下で紡錘体の動態を詳細に観察した。その結果、動原体ー微小管接続は紡錘体の二極性化に必須ではないことを見出した。
|
今後の研究の推進方策 |
動原体に局在するリン酸化酵素が、動原体に局在する微小管のクロスリンカータンパク質の集積量を制御することで紡錘体の二極性化を制御していることが予想される。そこで、動原体タンパク質の予想されるリン酸化部位に変異を導入し、我々の仮説を検証する。 また我々は、卵母細胞の減数第二分裂において紡錘体上で増加している因子を減数第一分裂で強制発現することで、減数第二分裂様に紡錘体が迅速に二極性化すること、そしてそれらの卵母細胞では染色体分配異常が増加することを見出した。そこで、減数第二分裂においてそれらの因子を抑制することで減数第一分裂様に紡錘体の二極性化が緩やかになるか、そして減数第一分裂様に紡錘体が二極性化した場合に減数第二分裂において染色体分配に影響があるかを明らかにする。 これらの結果より、中心体の無い卵母細胞において、どのようにして動原体が紡錘体の二極性化を推し進めるのか、そしてなぜ減数第一分裂と第二分裂では異なる機構によって紡錘体が二極性化されるのかを明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスに対する緊急事態宣言により出勤制限等が生じた時期は在宅勤務によるデータ解析を優先したため、一部実験計画を次年度へと移した。その結果、当該年度使用額が減少し次年度使用額が生じた。
|