研究課題/領域番号 |
19K06683
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
日下部 りえ 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 研究員 (70373298)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ヤツメウナギ / 円口類 / 軟骨魚類 / 鰓下筋 / 形態進化 / 骨格筋 / 舌筋 / 神経堤細胞 |
研究実績の概要 |
脊椎動物の頭部および頸部には、さまざまな発生起源をもつ筋肉が存在する。なかでも鰓下筋群(哺乳類では舌筋および舌骨下筋群が含まれる)の前駆細胞は、後頭部の体節から脱上皮化し、咽頭の後方を迂回して長距離を移動するという特殊な発生過程をたどる。本研究では、筋芽細胞の移動と分化タイミングの制御が、脊椎動物の複雑で多様な形態に寄与したことを示し、脊椎動物の複雑な形態進化の過程を明らかにすることを目指す。令和1年度は、円口類である日本産カワヤツメLethenteron camtschaticumの胚を用い、鰓下筋や四肢筋などの発生に関わる遺伝子を新規に単離し、発現パターンを調べた。また、軟骨魚類トラザメScyliorhinus torazameについても蛍光色素による細胞標識を行い、特定の中胚葉組織の挙動を観察した。また上記2種の動物両方について、上皮性細胞に特異的な抗体、および皮筋節のマーカー抗体を用いた免疫染色により、筋前駆細胞の性質を調べた。以上の実験の結果をカワヤツメとトラザメで比較し、羊膜類で得られている知見と合わせて検討した。さらに筋のみならず腱および腱の前駆細胞に特異的に発現する新規遺伝子を単離し、発現パターンを明らかにすることにより、鰓下筋周辺の非筋細胞の移動や分化の状態を解析した。これらの解析により、頭部の軟骨や腱、神経細胞に分化する神経堤細胞、および非体節性の鰓弓筋(咀嚼筋、咽頭収縮筋など) が発生する過程を可視化する基盤を整えることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度にはパートタイム実験補助者の協力を得て、遺伝子発現パターンの解析や免疫組織学的解析を効率的に進めることができた。またゲノムデータベースより、既知の遺伝子の非翻訳領域を同定し、それを利用した遺伝子プローブを用いてより鮮明に遺伝子発現領域を可視化することができた。
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今後の研究の推進方策 |
長距離移動する体節筋での機能が知られている遺伝子、腱の形成に必須な遺伝子、また軟骨分化に必須な遺伝子の発現パターンを詳細に調べる。得られた結果から、鰓下筋の各領域が分化し、鰓弓部の骨格と連携を作り出す際の、時空間的な関係を明らかにする。ヤツメウナギ胚が順調に入手できれば、ゲノム編集技術による遺伝子破壊およびレポーター遺伝子のノックインを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和1年度に使用した試薬類などは、他研究費による購入分などで大半をカバーすることができた。また顕微鏡・飼育設備・などの大型機器も既存のもので充足された。一方で、天然生体材料(ヤツメウナギ)が全く入手できず、一部の遺伝子改変実験を来年度に延期し、試薬等の購入を見送り未使用額が生じた。
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