研究実績の概要 |
Grainyhead-like3(Grhl3)遺伝子は、その発現様式と遺伝子欠損マウスの表現型から表皮マスター因子として発生段階の各表皮(上皮)組織で働くことが示唆されている。一方、Grhl3遺伝子ホモ欠損マウスは、100%の発症率で顕在性二分脊椎を発症し胚性致死となる。そこで、我々はGrhl3因子の表皮細胞における機能、また顕在性二分脊椎を発症する分子機序を明らかにすることを目標に研究を進めてきた。 これまでの結果から、Grhl3因子は表皮細胞の分化やその後の特異的な細胞動態(弾性率の富んだ)へと変化する際に、Grhl3タンパク質は核から細胞質へとその局在を変えることを明らかにした(Kimura-Yoshida et al., 2018.Nat. Comm.)。さらに、GRHL3因子を細胞質で局在するために必要な因子として、脱ユビキチン化酵素USP39因子を同定し、報告した(Kimura-Yoshida et al., 2022. Comm.Biol.)。 一方、未分化性外胚葉から表皮細胞へと分化する際に、Grhl3因子は核内でcanonical Wnt経路と協調的に働く。しかしながら、その際に必要な制御分子については全く解明されていない。そこで、Grhl3因子と結合し、未分化性外胚葉の核内で表皮細胞へ分化を進める制御因子の同定を試みた。現在、Grhl3因子とタンパク間相互作用し、かつその因子自身が核内局在を示す数個のタンパク質を同定している。またこれらの因子の中には、Grhl3因子との直接的に結合し、さらに表皮分化に働く因子を含むことがわかった。この因子に対して遺伝子欠損マウスを作製し、表皮組織でのみ欠損させたコンディショナルノックアウトマウス胚では顕在性二分脊椎を発症することがわかった。これら結果は現在国際誌に報告するため、論文投稿準備中である。
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