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2020 年度 実施状況報告書

FLCN-RAG-TFEによる代謝とエピジェネティクスを介した多能性幹細胞の制御

研究課題

研究課題/領域番号 19K06693
研究機関熊本大学

研究代表者

遠藤 充浩  熊本大学, 発生医学研究所, 助教 (40391883)

研究分担者 須田 年生  熊本大学, 国際先端医学研究機構, 卓越教授 (60118453)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード多能性幹細胞 / リソソーム / 代謝 / 着床 / 発生
研究実績の概要

哺乳類胚の着床前後で多能性の状態がナイーブ型からプライム型へと遷移するが、その背景となる分子メカニズムは良く分かっていない。本研究では、着床前後の胚における栄養状態や代謝応答の相違が、多能性状態の遷移に関与する可能性を追究する。申請者は、アミノ酸センシング制御因子FLCNがリソソームのマスター転写因子TFE3の活性を抑制していること、そしてFLCN-TFE3が形成するフィードバックループがリソソーム活性調節を介してグリコーゲン代謝を制御し、細胞の増殖分化に影響を及ぼすことを報告した (Endoh et al., Cell Reports, 2020)。またTFE3がミトコンドリア制御に関わることも報告してきた (Yang, Endoh et al., British Journal of Haematology, 2021)。さらに本研究によりFLCN-TFE3がマウスES細胞において、β-カテニンの活性化を介してES細胞の分化抑制に関与する可能性を見出してきた。さらにFLCN-TFE3がembryonic diapauseに関与する可能性も見出している。今後、β-カテニンが介在するWNTシグナル経路のどの部分がFLCN-TFE3によって影響を受けるかについてES細胞を用いた解析を行い、TFE3-リソソーム活性によるWNT-β-カテニン経路の制御機構の解明を目指す。また、マウス初期発生におけるFLCN-TFE3の役割について、着床前胚の表現型および遺伝子発現様式の解析を行う。さらに、embryonic diapauseにおけるFLCN-TFE3の役割まで明らかにすることにより、FLCN-TFE3-リソソーム経路による多能性の制御機構について、in vitro/in vivo両面から新規知見の創出を目指す。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

Tfe3-ERT2発現ES細胞を作成し、Tamoxifen投与によりTfe3を活性化させると、LIF非存在下で分化抵抗性を示した。FlcnをCrispr-Cas9系で欠損させたES細胞を作成して、同様の実験を行ったところ、Flcn欠損ES細胞もLIF非存在下で部分的な分化抵抗性を示した。Flcn欠損ES細胞ではTfe3が顕著に核内移行していた。そこで、Flcn欠損ES細胞においてTfe3をCrispr-Cas9系でさらに欠損させるとLIF非存在下での分化抵抗性がキャンセルされた。従って、Flcn欠損ES細胞の分化抵抗性はTfe3に依存していることが分かった。また、Tamoxifen処理したTfe3-ERT2発現ES細胞やFlcn欠損ES細胞では、Active β-カテニンの量が顕著に増加していることが分かった。ゲノム上でのActive β-カテニン局在の変化を明らかにするため、ChIP-seq解析を進めているところである。これらの細胞では不活性化フォーム(Ser9リン酸化)のGsk3bの量も増加していることから、Gsk3bの不活性化がActive β-カテニン増加の要因である可能性が考えられた。FLCN-TFE3によるGsk3b活性の制御をさらに確認するため、Gsk3b活性のレポーターの準備を進めている。恒常的活性化フォームのGsk3bの発現によりTfe3-ERT2発現ES細胞やFlcn欠損ES細胞の分化抵抗性がキャンセルされるかを調べる実験の準備も進めている。さらにマウスdiapause胚の公開RNA-seqデータを解析したところ、Tfe3標的遺伝子の活性化が起こっていることが分かった。FlcnやTfe3/bを欠損した正常胚・diapause胚およびES細胞の表現型解析を行うべく、これらの作成を進めているところである。以上、本研究課題はおおむね順調に進展しているといえる。

今後の研究の推進方策

(1)Flcn-Tfe3によるβ-カテニン活性化の上下流の分子メカニズムの解明と (2) Tfe3/Tfeb両欠損の正常胚・diapause胚およびES細胞の作成および表現型解析を行う。(1)については、まず活性化β-カテニン抗体を用いてChIP-seqを行い、β-カテニンの下流で活性化される遺伝子群の同定を行う。またβ-カテニン活性化の上流で働くWntシグナル伝達経路のどこがTfe3活性化によって影響を受けるかを明らかにする。またTfe3のChIP-seq解析で同定した標的遺伝子の中でWntシグナル伝達経路に関与する遺伝子の抽出を試みる。さらにTfe3によるβ-カテニンの活性化がリソソーム活性を介するかについてリソソーム阻害剤等を用いた解析を行う。(2)については、Rex1::EGFP ES細胞を親株にして、Tfe3-ERT2を用いてTfe3/Tfebコンディショナル両欠損ES細胞を作成し、ナイーブ型の遺伝子発現や表現型への影響を明らかにする。また導入済みのFlcnおよびTfe3欠損マウスについて着床前後胚の表現型や遺伝子発現の解析(1細胞RNA-seq)を行う。さらにembryonic diapauseの誘導および解除の実験系を導入し、Tfe3/Tfebの核内局在や標的遺伝子の発現解析を行う。FlcnおよびTfe3欠損マウスについて、embryonic diapauseを誘導・解除した際の表現型や遺伝発現の解析を行う。

次年度使用額が生じた理由

今年度中にFlcnおよびTfe3の欠損マウスの着床前後胚を回収できれば、1細胞RNA-seqによる遺伝子発現様式の解析を行う予定であった。現在、FlcnおよびTfe3の欠損マウスの交配を進めているが、まだ着床前後胚の回収まで至っていない。そこで次年度にこれらの胚を回収して1細胞RNA-seq解析を行うことにしたので、次年度使用額が生じた。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (2件) 図書 (1件)

  • [国際共同研究] シンガポール国立大学がん科学研究所(シンガポール)

    • 国名
      シンガポール
    • 外国機関名
      シンガポール国立大学がん科学研究所
  • [雑誌論文] Mitochondria transfer from erythroblasts to their macrophage niche via tunneling nanotubes.2021

    • 著者名/発表者名
      Yang C, Endoh M, Tan DQ, Nakamura-Ishizu A, Takihara Y, Matsumura T, Suda T.
    • 雑誌名

      British Journal of Haematology

      巻: In press ページ: -

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] Regulation of germline genes by PRC1.6 Polycomb and Dppa2/4 in mouse pluripotent stem cells.2021

    • 著者名/発表者名
      遠藤充浩, 遠藤多美枝, 岡野正樹, 丹羽仁史
    • 学会等名
      新学術「全能性&非ゲノム複製」領域合同若手研究会2021
  • [学会発表] 転写因子Dppa2/4によるES細胞におけるテロメア長の制御2020

    • 著者名/発表者名
      遠藤充浩, 遠藤多美枝, 岡野正樹, 丹羽仁史
    • 学会等名
      第43回日本分子生物学会年会
  • [図書] 生体の科学「多能性の遷移とエピジェネティクス」2021

    • 著者名/発表者名
      遠藤充浩、丹羽仁史
    • 総ページ数
      6
    • 出版者
      医学書院

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公開日: 2021-12-27  

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