研究課題/領域番号 |
19K06705
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
篠原 秀文 名古屋大学, 理学研究科, 講師 (40547022)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 植物 / ペプチドホルモン / 根端メリステム / 受容体キナーゼ / リガンド-受容体ペア |
研究実績の概要 |
植物の根の継続的な成長は,先端から地上部側に向かって存在するPLTタンパク質の濃度勾配が形成・維持されることで保たれるが,濃度勾配の形成・維持の機構は不明な点が多い.近年申請者はペプチドホルモンRGFとその受容体のペアがPLTタンパク質の濃度勾配を制御することを示したが,情報伝達経路の詳細は不明である.申請者は①RGFによるPLTタンパク質の濃度勾配の制御機構の解明のため,PLTタンパク質の濃度勾配を調節する化合物のターゲットの探索,および②RGF受容体の相互作用因子の探索を行い,各因子の機能解析を通じて,植物の根の継続的な成長のしくみを明らかにすることを目的とし,研究を行っている. 当該年度は,①約17,000化合物からなるケミカルライブラリより,PLTタンパク質の濃度勾配を正に調節する化合物を複数同定した.そのうち最も強い活性を示した化合物のターゲット探索を行うため,構造活性相関解析を行い,活性に重要な側鎖,および置換が可能な側鎖を明らかにした.②相互作用因子探索のツールとなるGFP融合RGF受容体の機能的発現株の作出を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①RGF受容体変異体中で失われたPLTタンパク質の濃度勾配を回復する低分子化合物のスクリーニングを行った.複数のケミカルライブラリを用い,合計約17,000化合物から,変異体中でPLTタンパク質の濃度勾配を回復させる化合物を複数得た.候補化合物の濃度勾配回復の濃度依存性,細胞毒性の評価を行い,最も回復活性の強い化合物A01およびA05を同定した.この2つの化合物のターゲット因子の探索のため,A01およびA05の構造活性相関解析を行い,回復活性に重要な側鎖,および置換が可能な側鎖を明らかにした. ②RGF受容体と相互作用する因子の同定を目的とした解析を行った.RGF受容体変異体にGFPを融合させたRGFR1を発現させた植物体を作出し,RGF受容体変異体の根端メリステムが縮小する表現型を相補する,機能的なGFP融合RGF受容体を発現する株を得た.
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今後の研究の推進方策 |
①PLTタンパク質の濃度勾配を回復させる化合物A01およびA05のターゲット同定を進める.構造活性相関解析により置換可能な側鎖が明らかとなったため,その部位にアフィニティータグのひとつであるビオチンを導入し,化合物の活性を維持したビオチン誘導体を作製する,シロイヌナズナ根のタンパク質抽出液をサンプルとして,ビオチン誘導体を作用させ,アビジンビーズでプルダウンを行う.共沈画分のプロテオミクス解析を行い,化合物と特異的に相互作用する因子の同定を試みる.化合物の相互作用タンパク質の候補が同定され次第,候補遺伝子の過剰発現株,変異株の作出と表現型観察,発現部位の解析,および化合物との結合実験などを進める. ②RGF受容体変異体中でGFP融合RGF受容体を発現する株を得たため,この株を用いた共免疫沈降を行う.GFP融合RGF受容体発現株の根タンパク質抽出液をサンプルとして,抗GFP抗体を作用させ,Protein Aビーズを用いて共免疫沈降を行う.共沈画分のプロテオミクス解析を行い,RGF受容体と特異的に相互作用する因子の同定を試みる.RGF受容体の相互作用タンパク質の候補が同定され次第,候補遺伝子の変異株の作出と表現型観察,発現部位の解析,およびRGF受容体との結合実験などを進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
(次年度使用額が生じた理由)ケミカルライブラリの使用費が当初予定していた額を下回ったため. (使用計画)プルダウン実験の条件検討のために比較的高価な磁性ビーズを数種類試用する必要があるため,アビジンビーズの購入費に充てる.またより効果的な免疫沈降実験のために,数種類の抗体やProtein A担体を用いた条件検討を行う必要が生じたため,抗GFP抗体およびProtein Aビーズの購入費に充てる.
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