生物の種が維持されるためには、同種の配偶体を選別して受精することが重要である。被子植物の雌性配偶体は、花粉管の伸長や誘引を制御するシグナル分子を 分泌し、同種の花粉管を選択的に受け入れる。これまでに、トレニア・シロイヌナズナという2種の植物の花粉管誘引因子LUREのアミノ酸配列を部分的に入れ替えることで別種の花粉管を誘引できることを明らかにし、またトレニアにおいて新規誘引因子CALL1を発見した。 本研究は、(1) 重要な作物種において花粉管誘引やin vitro受精を達成する実験系を確立し、(2) 花粉管の伸長を制御する誘引因子を同定すること、(3) 複数種由来の誘引因子の構造活性相関解析から、誘引活性を示すための構造の共通性、活性に種特異性をもたらすための構造の多様性について明らかにすること、を目的とする。これらの解析を通じて、花粉管の伸長や誘引を制御する因子の構造と機能について理解を深める。 今年度は昨年度に引き続き、(1)(2)トマトの胚のう細胞特異的に発現していた遺伝子のノックアウト株の作成をすすめ、不稔の表現型を示す個体が得られた。また(3)について、化学合成したトレニアLUREタンパク質およびその配列を近縁種のLUREと入れ替えたタンパク質の活性を、花粉管に対する誘引アッセイで解析し、トレニアLUREの花粉管誘引機能において重要な部位と重要ではない(タグなどを付加しても機能に影響しない)部位を同定し、まとめることができた。
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