研究課題/領域番号 |
19K06710
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
山崎 朋人 高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 助教 (70512060)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | miRNA / クラミドモナス |
研究実績の概要 |
miRNAによる遺伝子発現制御の仕組みは動植物の共通祖先となった単細胞生物が獲得し、進化の過程でその作動様式を変化させながら様々な生命現象を制御する役割を獲得してきたと推測される。ではその始原の姿はどのようなものだったのか、また、進化とmiRNA機能の多様化をより深く理解するため、本研究では解析の進んでいない単細胞生物の中で、単細胞緑藻クラミドモナスに着目して研究を行う。 本研究では、miRNAの整合性に必須な2本鎖RNA結合たんぱく質DUS16と相互作用するタンパク質群、ならびにmiRNAの作用に必須なAGO3タンパク質と総合作用するタンパク質群同定して機能解析を行う。またmiRNAが作用する遺伝子を同定するため、HITS-CLIP解析を行う。 昨年度までに、 miRNAの生合成に必須な2本鎖RNA結合タンパク質DUS16タンパク質と相互作用する7種類のタンパク質、miRNAの作用に必須なAGO3タンパク質と相互作用する34種類のタンパク質を同定した。本年度はこれら相互作用するタンパク質の中の77つに着目し、それぞれをコードする遺伝子を破壊した変異体をゲノム編集によって作り出した。そのうちの1つで、特定のmiRNAが消失するものがあった。 またmiRNAの標的遺伝子を探し出すため、クラミドモナスで初めてHITS-CLIP法を確立した。その結果複数のmiRNA標的遺伝子の候補が発見され、そのうち2つの遺伝子について解析したところ、2つともmiRNAによって翻訳が阻害されていることが分かった。 miRNAの生合成や作用に関わるタンパク質複合体の構成因子の機能解析が始まり、またmiRNAの標的遺伝子が発見されたことから、クラミドモナスにおけるmiRNAの分子基盤解明を着実に進めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞内でDUS16やAGO3と相互作用する(複合体を形成する)タンパク質群を同定し、それらをコードする遺伝子の破壊株の単離と解析が計画通り進行している。特にDUS16と相互作用するRNA helicase遺伝子の欠損変異体では特定のmiRNAだけが消失しており、このRNA helicaseが特別なmiRNA生合成経路に重要であることが示唆された。 また、miRNAの標的遺伝子を発見するため、当初はRIP-seqを行う計画であったが、検出感度に大きな問題があることが分かった。そのため圧倒的に検出感度の高いHITS-CLIP法をクラミドモナスで確立することに挑戦した。その結果AGO3と結合するmRNAおよびmiRNA群を網羅的に同定することに成功した。281遺伝子が候補として発見された中、抗体が入手可能であった2遺伝子に着目してqRT-PCR解析、western blot解析、polyA解析を行ったところ、2遺伝子ともmiRNAによって翻訳が制御されていることが明らかとなった。 このように、miRNAの生合成やmiRNAが制御する生理機能解明につながる研究結果が得られており、本研究は順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
DUS16、AGO3との相互作用が明らかとなった34種のタンパク質のうち、それらをコードする遺伝子の変異体が得られていない残りの27種類についての解析を進める。具体的にはゲノム編集によって変異体を作製し、miRNA生合成や遺伝子発現抑制への影響を解析する。 またmiRNAの標的遺伝子を探し出すため、HITS-CLIP解析を大きく展開させる。成功させたHITS-CLIP解析は温和な条件で培養した細胞を用いたものであったが、さらに異なる光条件、栄養条件で培養した細胞を用いたHITS-CLIP解析を行い、外部環境によって働きを変えるmiRNAの動態を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
特に必要な支出が無かっため、少額の次年度使用額が生じた。令和3年度予算と合わせて有効に使用する予定である。
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