細胞中のRNAのうちmRNAはごく一部であり、大部分は非コードRNA (ncRNA)である。中でも200 塩基を超える長鎖非コード RNA (lncRNA) の多くが機能未知である。申請者は、植物のRNAポリメラーゼ IIIの転写プロモーターに着目し、シロイヌナズナから260ヌクレオチド長のAtR8 lncRNAを発見した。RNAポリメラーゼ IIIは細胞機能の根幹をなすRNAを転写するが、それらはハウスキーピング的であるとされてきた。しかし、AtR8 lncRNAはマイクロアレイ解析によって感染防御およびストレス応答に関与することが示された。本研究では以下の3つの目的を設定し解析を進めた。 【目的1】AtR8 lncRNA結合タンパク質の同定:AtR8 lncRNAと相互作用するタンパク質の複合体を、シロイヌナズナ培養細胞(MM2d株)から単離精製しHSP70タンパク質を同定し、RNAと共に果たす生理機能について解析を進めた。本年度は、蛍光タンパク質との融合タンパク質を作り、細胞内局在を明らかにした。同時に、AtR8 lncRNAの細胞内局在を確かめるために、Mangoアプタマーと融合したRNAを作成した。 【目的2】AtR8 lncRNAの種子形成に関わる機能解析:AtR8 lncRNAが未熟種子にも多量に蓄積するため、in situ ハイブリダイゼーション法により未熟種子における局在を明らかしにした。 【目的3】AtR8 lncRNA遺伝子のサリチル酸応答メカニズムの解明:感染防御に関わるWRKY転写因子遺伝子の発現がAtR8 lncRNA遺伝子発現と逆相関するため、その制御機構を研究した。In vitro転写系解析の結果、サリチリ酸応答シス配列であるas-1を解した制御が行われていることが示されたので、今年度は培養細胞を使った実験でその結果を検証した。
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