研究実績の概要 |
モデル緑藻クラミドモナスの研究から、緑藻の持ついくつかの光受容体が見つかってきた。それらはいずれも、紫外線から緑色光までの波長域に吸収極大をもつ光受容体である。一方、クラミドモナスは赤などの長波長域の光に対する応答も示す。その代表例が概日時計のリセットである。リセットには可視光域のほぼ全ての波長の光が有効であるが、とりわけ赤色光の効果が大きい(Kondo et al., 1991, Plant Physiol., 95:197-205)。植物の赤色光受容体としてフィトクロムが知られている。多くの真核藻類でゲノム解析が進んだ結果、真核藻類にはフィトクロムを持つものと持たないものが存在することが分かってきた(Duanmu et al., 2014, PNAS, 111:15827-32)。クラミドモナスはフィトクロムを持たないため(Merchant et al., 2007, Science, 318:245-50)、どのようにして赤色光に応答しているのかはほとんど解っていない。そこで本研究では、クラミドモナスの概日時計のリセットの引き金であるROC15タンパク質の光依存的分解(Niwa et al., 2013, PNAS, 110:13666-71)を手がかりとして、緑藻の持つ未知の赤色光受容伝達機構に迫る。 今年度はROC15光誘導性分解の関連因子であるpCRY, B19[仮名]の解析を進めた。HAタグを融合したpCRY遺伝子をクラミドモナスの核ゲノムに組み込み、pCRYタンパク質の光応答の解析を可能にした。その結果、pCRYの光応答はROC15と同様の機構で引き起こされることが明らかとなった。また、B19遺伝子変異体の概日リズム解析から、B19は概日時計の振動機構自体への関与は強くないが、そのリセット機構には不可欠な因子であることが明らかなとなった。
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