研究実績の概要 |
モデル緑藻クラミドモナスは赤などの長波長域の光に対する生理応答を示すが、それを担う光受容伝達機構は不明である。クラミドモナスにおいて、赤色光応答の代表例は概日時計のリセットである。リセットには可視光域のほぼ全ての波長の光が有効であるが、とりわけ赤色光の効果が大きい(Kondo et al., 1991, Plant Physiol., 95:197-205)。 研究代表者らは、これまでの研究においてクラミドモナスの概日時計のリセットの背景には時計タンパク質ROC15の光による急速な分解であることを突き止めている(Niwa et al., 2013, PNAS, 110:13666-71)。ROC15の分解誘導には、概日時計のリセットと同様に可視光のほぼ全域が有効で、やはり赤色光が特に効果的である。細胞が光を浴びるとROC15のリン酸化が起こり、その後、プロテアソームにより分解される。 今年度は、ROC15の分解に異常を来す変異体から研究代表者らが同定した遺伝子の解析を中心に研究を進めた。その結果、この遺伝子の変異体においては、ROC15の光誘導性のリン酸化及び分解は、可視光域のほぼ全域で失われていた。またこの遺伝子は、陸上植物には存在するが緑藻にはないと従来は考えられていたタンパク質をコードするという、予想外の事実が明らかになった。この成果は、緑色植物の光応答機構の進化に関するあたらな知見を提供するものである。
|