研究課題/領域番号 |
19K06723
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
峠 むつみ (渡邉むつみ) 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 博士研究員 (60837582)
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研究分担者 |
峠 隆之 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (30415236)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 栄養欠乏応答 / アブラナ科植物 / 窒素 / リン / 硫黄 / メタボロミクス / 種間比較 |
研究実績の概要 |
本研究では、メタボロミクス解析を基盤に、アブラナ科植物に保存されているもしくは種特異的な栄養欠乏代謝応答の解明を目指している。令和二年度では、アブラナ科モデル植物6種を用いた窒素、リン、硫黄経時的欠乏実験サンプルの代謝物分析(無機イオン類、一次代謝物や二次代謝物)を終了し、表現型解析(湿重量やクロロフィル含量)や遺伝子発現解析(栄養欠乏応答マーカー遺伝子群)などで得られた全ての結果を統合して、相関解析や代謝ネットワークを構築することで代謝物変動の生理学的解釈を行った。現在、国際科学雑誌への投稿の準備を行っている。また、作物種を含むヤセイカンラン品種群を用いた硫黄経時的欠乏実験を実施し、表現型解析、遺伝子発現解析、代謝物分析を終了し、代謝物変動のカタログ化、アブラナ科モデル植物6種の実験により特定した栄養欠乏応答マーカー代謝物及び遺伝子の有効性の評価を行った。さらに、本研究の鍵となる研究項目の一つである、「アブラナ科植物の二次代謝物の多様性解析」を行い、その一部の研究結果について、学会および国際科学雑誌 (Liu et al., 2021, Frontiers in Plant Science) で発表した。また、ヤセイカンラン品種群においてもアブラナ科モデル植物6種と同様に、含硫黄二次代謝物であるグルコシノレートの再利用効率と硫黄欠乏耐性に関連性があることを示唆する結果が得られた。また、植物の代謝多様性に関わる鍵遺伝子特定の解析法を構築し、成果(Calumpang et al., 2020, Metabolites; Aneklaphakij et al., 2021, Frontiers in Plant Science) 等を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アブラナ科モデル植物6種を用いた窒素、リン、硫黄経時的欠乏実験についてのデータ解析及び解釈はほぼ完了し、現在、国際科学雑誌への投稿の準備を行っている。作物種については、「アブラナ科植物の二次代謝物の多様性解析」が進展し、その一部の研究結果を学会及び国際科学雑誌で発表した。この多様性解析結果を利用して、アブラナ科作物品種群をグループ分けすることで、効果的な組み合わせで栄養欠乏実験を行うことができるようになった。ヤセイカンラン品種群を用いた硫黄経時的欠乏実験を実施し、表現型解析、遺伝子発現解析、代謝物分析を終了し、現在データ解析及び解釈を行っている。代謝物変動のカタログ化方法や、栄養欠乏応答マーカー代謝物及び遺伝子の有効性の評価法などの構築も完了し、データ取得後の解釈過程の効率化につながっている。
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今後の研究の推進方策 |
令和三年度は、在来ナタネ品種群についての栄養欠乏実験を実施し、代謝物分析、遺伝子発現解析を終了する。アブラナ科モデル植物6種、ヤセイカンラン品種群、在来ナタネ品種群の全ての結果を統合することで、アブラナ科植物に保存されているもしくは種特異的な栄養欠乏代謝応答を特定する。また、種分化や栽培化に伴う植物進化や栽培化の歴史について、栄養欠乏代謝応答性の視点から考察を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため、予定していたドイツマックスプランク研究所(海外研究協力者)への出張や国際学会が中止となり、旅費や学会参加費用などの支出が減少したため、次年度に繰り越した。これらの費用は令和三年度、成果発表のための論文投稿費用に充てる。
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