研究実績の概要 |
サーモスペルミンは低分子塩基性有機化合物ポリアミンの一つで,維管束植物では木部分化の抑制に関わる。これまでの研究においてシロイヌナズナの変異体を用いた解析から,サーモスペルミンが特定の転写因子遺伝子の翻訳促進に働くことを突き止めた。しかし,その作用の分子機構は明らかでない。また,外的なサーモスペルミンは木部分化を抑制するが,その取り込み,輸送機構は不明である。本研究では,シロイヌナズナのサーモスペルミン非感受性変異,およびサーモスペルミンが翻訳促進する遺伝子群の応答解析から,サーモスペルミンが細胞内に輸送される過程,直接相互作用する標的分子の同定,特定mRNAを翻訳促進する分子機構の解明を目指して実験を進めてきた。 2020年度は,前年度までに得られていた,高濃度のサーモスペルミンに耐性を示すシロイヌナズナのサーモスペルミン非感受性変異株(its1-its11と命名)について,各変異の原因遺伝子の特定を行い,its1, its3, its7, its11の4つが,それぞれRNAメチル化酵素,RNAスプライシング関連タンパク,RNA結合タンパク,RNAシュードウリジン化酵素をコードする遺伝子に変異を持っていることを突き止めた。対応するT-DNA挿入変異株については,its1変異がサーモスペルミン非感受性を示すことを確認した。また,its11変異については,リボソームRNAのシュードウリジン修飾が低下していることを確かめた。以上の結果から,サーモスペルミンの作用にRNA修飾が深く関わることが強く示唆される状況に至った。
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