研究課題/領域番号 |
19K06726
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研究機関 | 宮城大学 |
研究代表者 |
日渡 祐二 宮城大学, 食産業学群, 教授 (10373193)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 微小管関連因子 / 遺伝子系統解析 / イメージング / 先端成長 / ヒメツリガネゴケ / アーケプラスチダ / 細胞分裂 / 重力屈性変異体 |
研究実績の概要 |
先端成長は細胞の一部分のみが伸長する成長様式で極性成長の典型例である。しかしながら、方向性制御に作用する微小管組織化の分子機構の全体像はよくわかっていない。本研究では、ヒメツリガネゴケ原糸体の先端成長をモデル系に用いて、先端成長の方向性制御に作用する微小管組織化の分子機構の全体像を明らかにすることを目的とした。 (1)真核生物に共通な微小管関連因子群について、緑色植物、紅色植物、灰色植物、後生動物から遺伝子を検索し、遺伝子系統解析を行った。微小管形成中心複合体γ-tuRC では、γ-tubulin は3 つの紅色植物シゾン、ポルフィラ、スサビノリに存在したが、他のサブユニット(GCP2-6、NEDD1、MORZART1)はこれらの紅色植物からほとんど見出されなかった。 (2)微小管生成因子AUG8の遺伝子破壊により先端成長の伸長速度が低下し、伸長の方向性が異常になること、さらに微小管量が低下するがわかった。オーグミンが先端成長での微小管生成に機能することが考えられる。AIR9では、PpAIR9a/b二重遺伝子破壊系統の植物体は原糸体の先端成長の速度が低下していた。また先端成長の伸長方向が乱れることから、PpAIR9は先端成長の方向性を制御することが示唆された。微小管消失因子ULD1a相互作用因子DLH1aの解析では、DLH1a遺伝子の遺伝子破壊体はYT195と比較して形態的な差異はみられなかった。 (3)ヒメツリガネゴケの原糸体は暗所培養下で重力ベクトルに対し逆向きに成長する(負の重力屈性)。微小管・アクチン繊維同時可視化系統SO5を背景系統として、紫外線照射によって変異集団を作成し、スクリーニングしたところ、SO5系統とは逆の重力屈性(正の重力屈性)を示す変異体gtr2、3が見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度はCovid-19のため、年度前期において予定通りの実験機会が得られなかった。また、細胞内発現コンストラクト、遺伝子破壊コンストラクトの作成、遺伝子導入に時間と労力がかかっている。
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今後の研究の推進方策 |
微小管関連因子群の機能解析については、蛍光タンパク質の遺伝子ターゲティングによる局在解析、遺伝子破壊、遺伝子発現抑制、遺伝子過剰発現解析による機能の推定を行う。特に、微小管生成因子AUG8については陸上植物における機能の保存性を調べるために、緑藻シャジクモ、コケ植物ゼニゴケ、被子植物シロイヌナズナのAUG8遺伝子を用いてヒメツリガネゴケAUG8四重変異体の相補実験を行う。微小管維持因子AIR9については、今後は、二重遺伝子破壊系統の先端成長における微小管動態を詳細にライブイメージング観察し、PpAIR9の微小管への機能を明らかにする予定である。被子植物シロイヌナズナのAIR9遺伝子を用いてヒメツリガネゴケPpAIR9二重重変異体の相補実験を行う。ULD相互作用因子DLH1aの多重遺伝子破壊を行い、方向性制御に対するDLH1aの役割を明らかにする。 重力屈性変異体gtr2、gtr3では表現型解析を継続するとともに、ゲノムのリシーケンスを行い、変異体に特異的なSNVを特定する。SNVから原因遺伝子の候補遺伝子を抽出し、これらの遺伝子の遺伝子破壊、遺伝子発現抑制、遺伝子過剰発現解析により原因遺伝子を特定する。 重力応答時の微小管動態の観察システムの確立では、細胞に対する重力方向を変化させながらライブイメージングできるシステムを構築する。このシステムを用いて、細胞に対する重力方向を変えて伸長方向を変化させた場合、伸長領域での微小管の生成、維持、消失の動態を調べて、微小管構造体の組織化動態の変化を明らかにする。
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