研究課題/領域番号 |
19K06727
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
平川 有宇樹 学習院大学, 理学部, 助教 (60736669)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 分裂組織 / CLEペプチド / ゼニゴケ |
研究実績の概要 |
前年度にゼニゴケCLE2ペプチドとオーキシン合成阻害剤は、いずれも無性芽の湾入部を拡大させる効果があることが分かったが、YUC2p:GUSマーカーを用いた観察ではこれらは独立の作用であることが示唆されていた。そこで、細胞形態を観察した結果、オーキシン合成阻害剤のyucasinを処理した個体では、分裂組織中の頂端細胞周辺の細胞の面積の拡大が見られた。このような作用はCLE2処理では見られず、やはりオーキシンとCLE2は異なる活性を持つことが示唆された。また、細胞形態観察からオーキシンが頂端細胞群の垂層分裂を正に制御していることが示唆されたが、これを確かめるには細胞種を識別するマーカーが必要である。 ゼニゴケCLE2の受容体として、CLV1の共受容体の候補であるCIKの機能解析をおこなった。その結果、CIKノックアウト株がCLE2に非感受性を示し、CLV1ノックアウト株と同様の表現型を示した。CLE2はCLV1とCIKの複合体によって受容されること、CLE2-CLV1-CIKモジュールが陸上植物に保存されていることが示唆された。 CLE2の標的遺伝子の探索に関して、トランスクリプトーム解析を実施した。ゼニゴケCLE2異所発現株では、分裂組織中の未分化細胞群が増加し、分裂組織が拡大する。この株の分裂組織周辺を切り出してRNAを抽出し、トランスクリプトーム解析をおこなった。野生株およびCLE2受容体遺伝子のノックアウト株との比較により、いくつかの候補遺伝子が得られた。このうち発現変動の顕著な1つの遺伝子について変異体を作出したところ、分枝の時期に異常が現れた。したがって、CLE2の下流で働く遺伝子の候補が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までに、分裂組織の観察手法についておおよその枠組みが得られていた。今年度は、膜受容体に関する研究を進め、CLV1の共受容体CIKの関与を明らかにした。さらに、CLE2の異所発現株を利用したトランスクリプトーム解析から、CLE2の下流標的遺伝子候補を見出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
得られたCLE2シグナルの標的遺伝子群について、遺伝子発現領域の解析とノックアウト株の作出をおこない、CLE2シグナルへの関与を明らかにする。分枝への影響が見られることが分かってきたので、分枝時期の定量方法についてより詳しく検討をおこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会等の実地開催中止により旅費が減少したことと、実験手法の変更により物品費が減少したため、これらの合算により未使用額が生じ、次年度に使用するよう変更した。
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