研究実績の概要 |
シロイヌナズナのAS2遺伝子は、葉の発生・分化に重要な役割を持ち、植物で広く保存されているAS2/LOB遺伝子ファミリーに属する。AS2が核小体周縁部にAS2 bodyとして塊状に局在すること、核小体タンパク質とともに葉の裏側因子ETTのDNAメチル化の維持に関わることから、本研究では、AS2および核小体タンパク質が関わるエピジェネティックな制御を明らかにすることを目的とした研究を行なった。第一に野生型、as2変異体、核小体タンパク質遺伝子の変異体nuc1, rh10におけるEM-seqによるゲノムワイドなDNAメチル化レベルを解析した結果、as2とnuc1, rh10変異体では特定の遺伝子領域内の一部のCG部位のメチル化レベルが低下していた。さらにAS2 bodyとの部分的に共局在する45S rRNA 遺伝子(45S rDNA)リピートに関してもDNAメチル化レベルを解析し、as2変異体とnuc1, rh10変異体でCGメチル化レベルが野生型と比べて低下していることを明らかにした。第2に核小体の構造や大きさに変化のあるnuc1, rh10変異体でAS2 bodyの局在解析を行った結果、AS2 body 局在の変化が認められた。従って、AS2のAS2 bodyへの局在は核小体が正常な機能と構造を持つことが重要であると考えられた。第三にFISH解析で、これらの変異体では45S rDNAの局在が変化していることを明らかにした。AS2, NUC1, RH10は45S rDNAの局在パターンに影響を与えると考えられる。以上の結果から、動物のみならず、植物においても核小体周縁部がDNAメチル化を通したエピジェネティックな制御の足場として機能する可能性が示された。
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