研究課題
プラスチドはプロプラスチドから分化する一群のオルガネラで、葉緑体やアミロプラスト、エチオプラストなどが含まれる。これらはアミロプラストなどのデンプン蓄積型プラスチドと、エチオプラストなどのデンプン蓄積型プラスチドに大別できる。申請者は、エチオプラストは葉酸によってデンプン合成が抑制されていること、また葉酸代謝拮抗剤である5フルオロウラシルを投与するとエチオプラストのデンプン合成が促進されることを見いだした。初年度は、変異源処理したシロイヌナズナから5フルオロウラシル耐性変異体を選抜した。これまでに約2万個体のスクリーニングを終えて、20系統の5フルオロウラシル耐性変異体を得た。いくつかの変異体は本葉が黄緑色をしており、葉緑体の機能が低下している可能性がある。現在、これらの変異体の遺伝学的解析を進めている。戻し交雑の結果からは、これら大部分の変異体が劣性変異を持つことが明らかになっている。
2: おおむね順調に進展している
概要で述べたように、20系統の5フルオロウラシル耐性変異体が得られいる。これらは、明確な表現型を示し、かついずれも劣性変異であることから定法に従って分子遺伝学的手法によって原因遺伝子を特定できるものと期待される。
単離した変異体のそれぞれについて、(1)表現型解析。戻し交雑を3回行った後、変異体ホモ接合体を単離し直し、表現型を詳しく調べる。具体的には、デンプン蓄積量、アデニン量の定量解析、プラスチドの機能解析(光合成能など)、GFPを用いたプラスチドのライブイメージングなどを行う。5フルオロウラシル以外の葉酸関連化合物に対する耐性を調べる。(2)原因遺伝子の特定。分子遺伝学的手法とゲノムリシークエンスを組み合わせて、原因遺伝子を特定する。(3)原因遺伝子の機能解析。シロイヌナズナゲノムデータベースを用いて遺伝子の機能を同定する。機能が未同定である場合には、類似性検索やドメイン検索などを行い、機能を推定する。酵素である場合には、大腸菌タンパク質発現系などでタンパク質を合成し、MTX、5FU、アデニン存在下での酵素活性を測定する。
本年度はほぼ予定通りに使用し、375円のみ残った。残金については、翌年度分と合算して物品費(消耗品)として使用する計画である。
すべて 2019 その他
すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
Sci. Rep.
巻: 9 ページ: 8924,
10.1038/s41598-019-45331-8
Front. Plant Sci.
巻: 10 ページ: 1604
10.3389/fpls.2019 01604
http://b-lab.nagahama-i-bio.ac.jp/?page_id=175