研究課題
小胞体はタンパク質や脂質の合成を担うなど,生命現象の根幹に関わる多機能なオルガネラである.その構造は複雑かつ動的で,チューブ状やシート状の膜が組み合わさって細胞内全体に網目状に広がり,特に植物細胞の中ではアクチン・ミオシンXIに依存して刻々と形態が変化している.小胞体の網目構造は真核生物で広く保存されていることから,小胞体の機能と密接に関連すると考えられる.しかし,この形態を維持するために小胞体膜がどのように管理されているのか,その分子機構には不明な点が多い.小胞体形態形成因子のひとつであるLUNAPARK (LNP) は小胞体膜に局在するタンパク質で,シロイヌナズナは2つのホモログ(LNPAとLNPB)をもつ.これらを同時に欠損した二重変異体では,小胞体のシート状構造が減少してネットワークが粗くなり,野生型の細胞では見られない異常な凝集体が形成される.そこで本研究では,この異常な凝集体に着目してLNPと小胞体の品質管理の関わりを明らかにすることを目的としている.この凝集体がどのように形成されたのかを明らかにするために,まず,透過型電子顕微鏡により二重変異体の細胞内の微細構造を観察した.その結果,凝集体やその周辺に異常な膜構造が認められた.次に,細胞破砕液から密度勾配遠心法によって凝集体を単離する方法を確立した.質量分析によるプロテオーム解析を行い,各画分に含まれるタンパク質を比較することによって,この凝集体に濃縮される因子の解析を進めている.
2: おおむね順調に進展している
研究計画にしたがって,概ね順調に進展している.
研究計画に基づいて遂行する予定である.
研究に必要な一部の変異体植物の調達に時間を要し,反復実験を次年度に行うこととしたため.研究計画には大きな変更は生じない.
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
Plant Biotechnology
巻: 37 ページ: 475~480
10.5511/plantbiotechnology.20.1201b
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