研究課題/領域番号 |
19K06736
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
谷口 俊介 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (00505331)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 原腸陥入 / トロポニン / 細胞形態 |
研究実績の概要 |
多細胞動物の一生において、体を形づくる発生過程には未だ説明しきれていない分子メカニズムがたくさん存在する。例えば、単純な細胞シートが陥入を経て原腸を作る過程の分子メカニズムを完全に説明するには情報のかなりが不足している。そこで、本研究では人生の中で最も重要であるとさえ言われる原腸陥入過程において、トロポニンが非筋肉細胞で担う働きを明らかにすることを目的とする。トロポニンはカルシウムイオンを受容し筋収縮スイッチを担うタンパク質であり、骨格筋でのみ機能するとされている。 今年度はトロポニン複合体が、どのように細胞骨格のmodificationを担っているのかを調べる上で必須な免疫沈降法を実現するため、必要となる抗体作成をまず進めた。昨年度に作成したウサギ由来抗体では、対象タンパク質をきれいに識別できなかったうえ、原腸陥入時と、後の幼生期の食道筋肉とでは染色パターンにばらつきが見られたため、2つのステージ間でトロポニン自体に差があることが疑われた。そこで、それぞれのステージからトロポニンmRNAを単離し、シーケンスを確認したところ少なくとも2種のmRNAが存在していた。ゲノムDNA上は遺伝子として一つであるため、alternative splicingの可能性が考えられた。次に、それぞれのmRNAが持つ特異的な配列をもとに抗体を作成し、染色したところやはり一方は原腸胚のみ、もう一方は幼生期のみを認識することが明らかになった。よって、発生ステージによってトロポニンを使い分けている可能性が強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までの成果で、トロポニンが原腸陥入時に機能していることは明らかになったが、それが「どのように」という点が未解明のままである。しかし、今年度はその解析に必要となる抗体作成を進めると同時に、予想外のalternative splicingの現象まで見つけることになったので、仕組みの理解が確実に進んだため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度まで得られた複数種の抗体を利用し、原腸陥入時のトロポニンのパートナーを探索する。また同時に、細胞骨格のmodificationに機能していると想定される分子の役割をウニの原腸陥入時に解析することで、トロポニンと協調して働くメカニズムの理解を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
【次年度使用額が生じた理由】2021年度はトロポニンmRNAの多型同定および他の候補機能分子の同定のためシーケンス費用に予算を利用した。しかし一方で、別の面白い機構が見つかる可能性が出てきたため、主の目的であった分子の機能解析にまで到達できなかったため。 【使用計画】2022年度は実際に原腸陥入時に細胞内で機能する分子の同定と解析を引き続き行うので、主に分子機能解析に予算を利用する予定である。
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