真骨魚に起こった体の作りの変化として最も顕著なものの一つに、配偶子輸送管(輸精管と輸卵管)がまったく新しく作り直されているように見えることがある。真骨魚以外のほとんどの脊椎動物では輸卵管はミュラー管、輸精管はウォルフ管という、生殖巣の外に形成された管由来だが、真骨魚では両者ともに生殖巣内部に新しく管を形成している。真骨魚はどのようにして、このドラスティックな形態形成の変化 を進化させることが出来たのだろう?それともドラスティックに見えて、よく調べればミュラー管やウォルフ管の変形にすぎないのだろうか?本研究はこの2つの仮説のどちらが正しいのかを問う。 ミュラー管形成に必須な遺伝子は、マウスで多数同定されているが、ミュラー管特異的に発現する遺伝子は少ない。ここでは間充織から分泌されミュラー管の陥入と伸長を誘導するwnt4に着目し、メダカで2つのwnt4ホモログ,wnt4aとwnt4bノックアウト変異体(KO)の表現型を観察した。その結果、wnt4a KOではオスメス共に正常な外部形態を持つ成魚 に発生したが、生殖巣後半につながる伸長部が体腔内に留まり、WTでは膀胱の腹側で伸長する配偶子輸送管(メスの輸卵管とオスの輸精管)が全く形成されなかった。本年度はwnt4a KOの別のKOallele、およびwnt4a発現部位特定のためwnt4a-GFP fusion alleleの作成が完了し、新たな表現型の記載ができた。さらにwnt4aとwnt4bダブルノックアウト変異体(KO)の表現型も観察した。哺乳類とは異なり生殖巣性分化には影響がなかった。 アミノ酸配列の系統解析より、真骨魚のwnt4aが哺乳類wnt4のorthologであり、ortholog KO表現型の類似性はマウスでのミュラー管形成と真骨魚でのオスメスの配偶子輸送管形成が相同な現象であることを強く示唆する。
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